走り出すマジェスタの車中で麻理子は安堵の表情を浮かべていた。
「あ、ありがとうございました」
やっと普通に声が出る様になった。
「あんな所でボーッとしてたら駄目よ!しかもこんな時間に!」
「ご、ごめんなさい・・・」
「あんな連中と関わると酷い目に遭うよ!走って逃げるか大声出して助けを求めなきゃ!」
「は、はい・・・」
「怖かったのよね。無理も無いわ」
叱咤する遥子とは反対に麗子はルームミラー越に麻理子を見ながら優しい言葉を掛ける。
「家まで送るわ。ご両親も、きっと心配してらっしゃるわよ。お住まいはどの辺り?」
「・・・・・・・・」
麗子の言葉に麻理子は無言で俯いてしまった。
「何か訳あり?」と遥子。
麻理子は返事をしない。
「黙ってちゃ判らないジャン」
麻理子の膝の辺りをポンポンと叩きながら顔を近づける。
「何か話してよ。山本麻理子サン」
「!」
唖然とする麻理子。
「どうして私の名前を!?」
「だって今日、入学式で一緒だったじゃない」
「ええっ!?」
麻理子は今日の高校の入学式の記憶を辿り始めた。
だが遥子との接点は全く思い出せなかった。
「私、武蔵丘女子高校1年D組の槙村遥子」
「・・・同じクラス」
「そうよ。ヨロシクね」
遥子は手を差し出し麻理子は戸惑いながらも、それを握り返した。
「それで、何があったのか話してよ。お互いクラスメイトなんだし、いいジャン」
「う、うん・・・・・」
何から話していいのか、それ以前に何を話したらいいのか。
今の麻理子には適切な言葉が浮かばなかった。
その時
くぅ~~~ぅ~~~…..
麻理子のお腹が鳴り出した。
そういえば、まだ夕食を食べてなかったのだ。
情けない音が車内に響き渡り麻理子は真っ赤になって、また俯いてしまった。
「お腹で返事されてもねぇ」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべる遥子の言葉に両手で顔を隠す麻理子。本気で恥ずかしがっている。
「麗ネェ、あたしもお腹、空いちゃった。ファミレスにでも寄ってくれない?」
「そうね。私もコーヒーでも飲みたいと思ってた所」
甲州街道を走行中に調度よいタイミングで一軒のファミレスの看板が見えた。
マジェスタはそこの駐車場に流れ込む。
平日の夜9時過ぎとゆう事もあり比較的、空いている様だ。
マジェスタは入り口に一番近いスペースにバックで停まった。
「さあ、行こう」
「え、で、でも・・・」
「心配いらないって!今日は姉貴のおごり!」
遥子の言葉に麗子も頷いている。
遥子は反対側に廻ってドアを開けてあげた。
「あ、ありがとう」
「その代わり何があったのか、ちゃんと話してね」
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