ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆029

『里香は島根の資産家に三行半を突きつけられた』
『向こうでワガママ放題やって追い出されたんだって』
『やっぱりマンション持ちん所のお嬢様だね』
『旦那が他所に女作って捨てられたんでしょ?』
『いや、慰謝料を、たんまり貰ってウハウハだって話だけど』
『子供を連れてきたって事は向こうの財産目当てなんだろう』


里香が実家に戻ってきたと同時に周囲にネガティヴな噂が広がり始めたのだ。


広めてるのが中学時代の同級生である事は容易に想像出来た。
そして、この出来事は忘れかけてた里香のトラウマをもう一度呼び覚ましてしまった。


「私自信が気にしなければ済む事は判ってるんです。でもやっぱり辛くって…」
「素敵な同級生だ事……」と呆れ顔の眞由美。勿論、皮肉である。
「でも泣いてちゃいけないと思ったんです。息子の為にも私自信の為にも。だけど一人で戦うのは心細くって…こっちには友達も居ないし……」
「それでウチに来たのね」
「は、はい!」


それは全くの偶然であった。
どうせなら矢沢ファンの友達を作りたいと思った里香はネットで様々な矢沢関連のウェブサイトを片っ端から読み進めて情報を収集。
そこで偶々、眞由美の店の事が書かれている複数のページに辿り着いた。
眞由美本人はネットに殆ど関心が無く、Open Your Heartはホームページもブログも開設していない。
だが真純やネットに明るい常連客等、古くからの仲間達がウェブ上で眞由美の店を紹介してくれるので、その宣伝効果は、かなりの物なのだがITに疎い眞由美にはその実感が殆ど感じられていなかった。
里香も始めは自分の家に近い店とゆう理由だけでOYHに興味を持ったのだが関連項目を読んで行くと意外な事実に辿り着けた。
オーナーの眞由美に関する記述に例の8年前の出来事が絡めてある書き込みが幾つか見付かったのだ。


「大袈裟に思われるかもしれませんが運命だと思いました。神様が私に、この店に行きなさいって言ってる様な気がして」


8年前のあの騒動の直後、里香は眞由美にお礼を言って深くお辞儀をし、眞由美は首を振りながら里香に一言「楽しみましょうね」と微笑んだ。
里香の息子とも目が合い息子も母に習ってお辞儀をした。
眞由美はそんな里香の息子に更に顔を綻ばせ手を振って自分の席に向かって行った。


二人の直接的な接点は、たったこれだけなのだが里香はこの日、眞由美の事だけは絶対に忘れまいと誓った。


そしてあの日、里香はOYHに行く決心をする。

つづく

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