ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆096

DMに向う前にランチという事で赤坂駅近くのコージーコーナーに立寄る裕司と麻理子。
満席だったが2人が店に入ると同時に4人掛のテーブルが空いたので待たずに席に着く事が出来た。

注文を済ませると麻理子が徐に口を開く。
「ねぇ、裕司君、昔バンドやってたんでしょ?」
「えっ!?」
大袈裟に思える位に驚きを露にする裕司。
「この前、敏広君達に聞いたの」
「あぁ、そうなんだ。うん、高校の頃にね・・・」
「凄い上手だって聞いたよ」
「うん。あいつ等は本当に上手いよ!敏広は器用だから何でも直ぐにマスターしちゃうし賢治も小学校から・・・」
「そうじゃ無くて裕司君のヴォーカル」
「えぇっ!いや・・・自分では何とも・・・」
「文化祭、凄い盛り上げたんでしょ?」
「あいつ等そこまで話してるんだ・・・」
妙に恥ずかしがる裕司。
「確か…にあの頃は思い出深いね」
「凄いね。羨ましいな」
「羨ましい?」
「私、歌とか楽器って全然駄目だから」
「俺も楽器は、からっきし駄目だよ」
「でも歌は上手なんでしょ?」
「まぁ・・・正直、歌には自信があるけど・・・」
「けど?」
「俺が歌に自信が持てる様になったのは、お兄ちゃんのお陰なんだよね」
「お兄ちゃんって、この前、話してた?」
「うん」
ここで注文した料理が運ばれ、とりあえず食事を始める二人。
食後のアイスコーヒーとアイスティが運ばれてくると
「そのお兄ちゃんのお話、聞かせて」
「えっ?」
「裕司君にビリーを教えてくれた人でしょ?」
「あぁ、憶えていてくれたんだ」
「うん」
裕司達が5月にホスト役で真純に川崎OYHに呼び出された日、裕司と麻理子が、まともな会話をしたのは、この時が初めてであった。
「あの時、私と似ているなって思ったの」
実は裕司も同じ事を思っていた。
「あの時は私の楓叔母さんの話をしたでしょ?だから今度は裕司君の番」
「うん。判った」
裕司は過去の記憶を辿りながらゆっくり話し始めた。

つづく

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