「あら?珍しいじゃない?」
「久し振りだな」
「どうしたの?急に父娘、揃って」
「えぇっ!?」
眞由美の言葉に驚きの声を上げる遥子達。
「父です」
「私の元旦那よ」
「麻生影虎です。娘と元女房がお世話になっております」
低くドスの効いた声だが物腰は柔らかい。
同時に麻理子達は失礼とは思ったが愛美が父親に似ないで良かったと思った。
愛美と影虎の二人は一番奥の止まり木に並んで座る。
「それで?今日ウチに来た理由は何?」
一通りの雑談の後、眞由美が改めて影虎に質問する。
「あぁ、実はな・・・」
「待ってパパ。私から話すわ」
愛美はカウンターから立ち上がり一歩後ろに下がって皆を見回した。
「遥子さん達も居てちょうど良かったわ。ママと、お仲間の皆さんに御報告したい事があります。実は私、麻生愛美、結婚しまーす!」
「えぇ~~~~~っ!!?」
本気で驚く遥子、麻理子、里香の3人。
「あら、そうなの?」
対照的に全く驚いていない眞由美。
「隅に置けないわね。いつの間にか、そんな相手が居たなんて」
「それじゃママ、許してくれるの?」
「許すも何もアンタの人生じゃない。好きになさい」
「よかった!ママ、ありがとう!」
「所で相手は誰?アンタを貰ってくれるその奇特な男って。私の知ってる人?」
この眞由美の言葉に遥子達は不可解な表情を浮かべ互いに視線を合わせた。
「勿論!ママも、よーく知ってる人よ」
「一体誰よ?」と苦笑いの眞由美。
「洋助さんよ」
「えっ?」
「洋助さん」
「何?もう1回、言ってくれる?」
「だから洋助さん」
「あら・・・私、耳がおかしくなっちゃったのかしら?アンタがさっきから洋助って言ってる様に聞こえるんだけど」
「おかしくないわ。洋助さんだもの」
「・・・・・益々おかしいわねぇ。私が知ってる洋助って一人しか居ないんだけど・・・他に誰か居たかしら?」
「だーかーらっ!」
愛美はカウンターに乗り出す様に一歩、前に出た。
「ママもよく知ってる三重出身の元高校球児で現在スポーツ・メーカー、ミズハラの社員の水島洋助さんが私の未来の旦那様よ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何ですってぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」
眞由美の絶叫はワンブロック離れたワン・ナイト・ショーのマスターの耳にまで響いた。
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