ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆135

入学式当日。

遥子は、この日程、神様に感謝した事は無かった。
何と麻理子と同じクラスになれたのだ。

《駄目……顔って正直…………》

式の真っ最中でも、ついつい表情が綻んでしまう顔に自分でも呆れてしまう。

「何さっきからニタニタしてるのよ?気持ち悪い子ねぇ!」と母、響子。

「えへへへへwww」

この時、遥子はまだ麻理子と同じ学校になった事を母には話していなかった。

同じ学校、しかも同じクラスともなれば友達になれるチャンスは幾らでもある。
待ちに待った機会。遥子は先走り過ぎて逆にキモい奴と思われない様にしなきゃと自分を戒めた。

《慌てる事は無いわ。キッカケが出来るのを今は待とう》

だが、そのキッカケは意外に早く訪れた。

その日の夜

三枝、旧姓、槙村麗子は実家のクラウン・マジェスタで調布駅まで遥子を迎えに来ていた。

遥子は入学式を終えると荷物を全て母が運転するマジェスタに載せて車の中で着替え、そのまま渋谷まで買い物に出かけてしまった。
8時過ぎに電話があり9時には調布駅に着くとの事で偶々、実家に戻っていた麗子が母の代りに送迎を買って出たのだ。

ロータリーに車を停めていると麗子はパルコの前で佇んでいる一人の少女が気になった。

《家出かしら?》

結婚退職する迄、警察官だった為、周囲に対して未だに必要以上に注意を払ってしまう。

その時、一人の影がマジェスタに近づいてきた。
それが遥子だと瞬時に判断した麗子はトランクのレバーを引いて車外へと出た。

「麗ネェ!帰ってたんだ!」
「随分、買ったわねぇ」と呆れ顔の麗子。

一体どうやって一人で持って来たのか不思議に思える位に大量の買い物袋。
それを手際良く中に詰めてトランクを押し込みパッパと手を払う。

「お待たせ。ってどうしたの?」
「ん?あの子がね」とパルコの方を指差す麗子。

「あの子?」
「さっきからずっとあそこに居るのよねぇ。家出だったら保護しなきゃでしょ」
「ふ~ん」と遥子も視線を向ける。だがその女子の顔を見て遥子は思わず声を上げた。
「あぁっ!!」
「知ってるの?」
大きく頷く遥子。
「天使!」
「あの子が!?」
「あっ!」

その時、柄の悪そうな男3人が麻理子を取り囲み始めていた。

「ヤバイわね」
「ちょっと行ってくる!」

走り出す遥子。

「気をつけなさいよ!」
「あいつ等がねっ!」
「………まぁ確かにねぇ」

腕組みをする麗子。
遥子が中学生の頃、何度か痴漢に遭い全て自らの手で撃退するも、その内2回程、相手の腕を折ってしまい過剰防衛を問われた事があった。

麗子は逆に遥子が、やり過ぎるんじゃないか心配になり自分も追う様にパルコの方へと向った。

思わぬ所で9年前の念願を果たした遥子。

予想はしていたが麻理子はやはり自分の事を憶えておらず、その後も思い出す事は無かった。
だが遥子は寂しいと思う所かその事実に何故かホッとした。
9年前の延長では無く、これから新しい時間を共有出来るかもしれないとゆう期待と喜びの方が大きかったのだった。

つづく

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