部屋に入ると麻理子は小走りで窓際へと向かい遥子が照明とエアコンのスイッチをONにする。
カーテンを開けて外を眺める麻理子。
「なぁんだ。海、観えないや」
「仕方ないわよ。向きが違うもの」
ホテル・ニューグランドの新館は本館と違い北西向きなので海の方を観る事は出来ない。
「あ、でも桟橋とか観えるよ!」
大桟橋とその向こうには雨のせいで霞掛かっているがコスモワールドの観覧車にランドマーク・タワー、インターコンチネンタルも観える。
遥子も窓際へと向かうと
「桟橋を~濡らす~雨~♪」
二人同時に♪赤い爪を歌い出し一緒に笑う。
「麻理子もすっかり永ちゃんにハマっちゃったね」
「うん!」
今更だが、こんなにもYAZAWAにハマるとは遥子も麻理子自身も予想していなかった。
それから上着をハンガーに掛けバスルームへと向かう遥子。
やっぱりビジネスホテルと違い広くて快適そうである。
「わあ、広いねぇ!」麻理子が背後から覗き込む。
「またあの時みたいに一緒に入る?」と悪戯っぽい微笑を浮かべる遥子。
「えぇ~っ!?」と言いつつも麻理子も嫌ではなさそうであった。
そしてあの頃の様に向かい合って温まる麻理子と遥子。
「麻理子また胸、大きくなったんじゃない?」
「えっ?」
断りも無く手を伸ばして触る遥子。今では麻理子も慣れてしまったのか全く抵抗する素振りを見せない。
「この前、改めて採寸したらEになってた」
「イーッ!?」
素っ頓狂な声を上げる遥子。
「ずるーい!何で麻理子ばっかり!!」
「知らないわよそんなの……キャア!」
突然遥子が麻理子の胸を手荒に揉み始めた。
「ちょ、ちょっと乱暴にしないで!」
「うるさい!全国のペチャパイ女の苦悩を思い知れっ!」
「い、意味わかんない!」
「何よこれくらい。どーせ裕クンにもっと激しく揉まれてるんでしょっ!」
「……………言わない!」
「麻理子ってホント分かり易いよねぇ。あら?こんな所にキスマークが」
「ええぇっ!?」
「ウッソーッww」
「………もう遥子のバカッ!」
「きゃーーーーっ!」
麻理子の逆襲が始まった。
「ご、ご、ゴメン麻理子………悪かったわ!」
「だーめ!もう遅い!」
「お、お願いだから勘弁して…………キャハハハハハ!」
実は遥子はくすぐられるのに非常に弱かった。
「今こそ積年の恨み晴らしちゃうから!」
麻理子は過去に何度か遥子からエッチな悪戯をされた事を急に思い出しリヴェンジを果たそうとする。
「ぎゃっはっはっはっはっ!や、止めてぇーーーーーーっ!!」
高校時代、実際に他の生徒や一部の教員からレズ疑惑をもたれた事もあったがそれ位、二人は本当に仲が良かった。
その後、風呂から上がると二人はチャイナドレスを出して二人だけのファッション・ショーを楽しみ夕食も食べずに眠ってしまった。
翌日、早朝に麻理子が「お腹空いたぁ!」とぐずり出したのは言うまでもない。
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