「あっ、そういえば…」
照れ隠しで遥子が沈黙を破った。
「えっ?」
「手を洗ってなかったわ」
自身の右手をプラプラと揺らす遥子。
それを見て先程学校で下着の中に手を入れられた事を思い出した麻理子の顔が更に真っ赤になる。
すると遥子は意地悪な微笑を浮かべながら右手の指を是見よがしに自分の鼻に近づけて匂いを嗅ぎだした。
「ちょっと信じられない!!」
麻理子は遥子の腕を掴み強引に鼻から離そうとする。
そのままベッドの上でじゃれ合う二人。当然、遥子の方が優勢で麻理子は簡単に下に押さえ付けられてしまう。
「うふふふ。私に勝てるとでも思ってるの?」
「あ~ん!」
袈裟懸けに押さえ込まれ足をジタバタとさせる麻理子。
「このアンヨが騒々しいわねぇ」
すると遥子は麻理子の腰の辺りを抱えると同時に思い切り上へと持ち上げた。
「キャアッ!!」
いわゆるマングリ返し(別名、恥ずかし固め)の状態にされてしまった麻理子。スカートがはだけてぱんつ丸見えになる。
「あーら良い眺め!」
「嫌ぁ!恥ずかしい!!」
「うんうん!こっちの方は学習の成果が出てるわね」
インナーのファッションチェックをする遥子。
今日の麻理子のショーツはショッピンのバックレースで両サイドにリボンとチュールレースがあしらわれたキュートなデザイン。
あられもない姿にされ麻理子はこの時、実は遥子が一番危険なんじゃないかと本気で思った。
「お願いだから離してぇ!」
「どうしよっかなぁ~」
「お願い!何でもするからぁ!」
本能的に身の危険を感じた麻理子が哀願する。
「ホントになんでもする?」
「うん!するぅ!」
「じゃあ麻理子のヴァージン奪っちゃっていい?」
「ええぇっ!?」
本気で固まる麻理子。
「冗談よ!」
ゆっくりと体制を仰向けに下ろし捲れたスカートを戻してあげる。
「麻理子ってホント可愛い」
切なそうな表情の麻理子に顔を近づけて微笑む。
「………遥子の意地悪」
「もし私にオ(ピーーー)が有ったら麻理子のオ(ピーー)に(ピー)して(ピーー)しちゃってるわ」
それを聞いて麻理子の顔が茹でダコの様に真っ赤になる。
「エッチ!!」
麻理子の絶叫にクスッと笑う遥子。そして
ちゅぽっ!
遥子はそのまま麻理子の唇にキスをした。
余りに突然なのでポカンとする麻理子。そして今度は頬と鼻頭が桜色に染まる。
その時、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「遥子ーっ!帰ってきてるのーっ?」
母、響子の声が響く。
「うん!ただいまーっ!」
「もしかして麻理子ちゃんも来てるーっ?」
「うん。居るよーっ!」
「お寿司の出前を取るから食べていって貰う様に伝えてーっ!」
「伝えなくても聞こえてるわよ」と苦笑し麻理子もクスクス笑う。
響子の帰宅がこの場の雰囲気を変えてくれた。
遥子のバースデーのディナーは毎年、遥子のリクエストで特上寿司の出前を頼む。
「とゆうわけで今日も晩ご飯、食べていってね」
「うん。いつもありがとう」
「遥子ーっ!ちょっと手伝ってーっ!」
「寛いでて」
麻理子にそう言って遥子は1階へと降りていった。
遥子の部屋にある鏡を見ながら麻理子は自分の唇に指を触れる。
ファースト・キスを同性に奪われた事実は正直ちょっとショックだった。
だが同時にその相手が親友の遥子である事には何故だか納得してしまうのであった。
他の女子だったら嫌悪感を抱き直ぐに口を濯ぎたくなったかもしれないが遥子なら。そして……
麻理子は先程の遥子の言葉を思い出してしまい急に恥ずかしくなって布団で頭を抱えた。
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