ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆222

ライヴ前日 am9:00

麻理子とYASHIMAのメンバー、そして琴音達サギ高吹奏楽部はリハーサルの為に会場となる【川崎うぉるふぃホール】(実在しません)に集まっていた。

「すみませーん!こっち、いまいち自分の音が弱いんで上げて下さい!」

敏広が音効さんにマイクでモニターの音量調整を頼む。

そこに

「お疲れ様!」

真純が何か荷物を持ってやってきた。

「情事さん、それ……」
「ジャーーン!」

手に握った白い物を、これみよがしに突き出す真純。
それは矢沢永吉ファンなら誰もが憧れる白のマイクスタンドであった。

「ワン・ナイト・ショーのマスターから借りてきたのよ!」
「マジっすか!?スゲェーーーッ!!」

しかもワン・ナイト・ショーに常備してあるそれは本物と同じ仕様だと噂されている。

「マスターからの伝言よ。自分は明日、観に行けないけどライヴの成功を祈るって」
「ありがとうございます!」

裕司は店のある方角へと身体を向けてお辞儀をした。

「ただし!マイクターンは禁止だからね!マスターは壊れても構わないって言ってくれてたけど床に傷……」
「その辺は心得てますよ」
「ならばよろしい!明日は思い切り歌って頂戴!」
「はい!」

受け取った白マイクスタンドを繋げてリハーサル再開。

本番さながらのゲネプロを麻理子と共に客席上から眺め、真純はYASHIMAの実力に心底関心していた。

「ホント、大したもんよねぇ!」
「凄い上手ですよねぇ」
「これなら明日も期待出来るわね!」
「はい!」
「麻理子ちゃん有難う!澄子さんの代わりに私からもお礼を言うわ!」
「そんな…私は何も……」

お昼の休憩に入り控え室にて真純が用意してくれた差し入れで昼食。午後からのリハ開始時間が迫ると敏広と賢治は白マイクスタンドがどうしても気になってしまい他のメンバーより早くステージへと向かう。

過去に何度も手にした事のある代物だが店とステージとでは、やはり雰囲気も気分も違ってくる。

代る代る手に取り子供の様に永ちゃんに成りきってると

「あの……」

声の方に振り返る二人。琴音であった。

「私も宜しいですか?」

恥ずかしそうな表情の琴音に「どーぞどーぞ!」と譲る。

「わぁ……」

いわゆる白マイクスタンドに初めて触れる琴音。レプリカとはいえ、その重厚感に圧倒される。

「折角だから何か歌ってみましょうよ!」
「えぇっ!?」

二人に言われ躊躇するも照れながらワン・フレーズ歌いだす。

「・・・・・のーってくれ!」
「Ha~Haっ!」敏広と賢治は直ぐに反応。コーラスをやってくれる。

「ろ、Rock’n’roll Night!」
「Ha~Haっ!」

実は琴音はカラオケで、この♪止まらないHa~Haをよく歌っていた。

音大卒という事もあり琴音の歌はピッチがかなり正確で声質も綺麗であった。

また敏広と賢治が自分を乗せてくれるので気分が良くなってしまい、そのまま歌い続けると今度はリアルにドラムの音が聞こえだした。

驚いて後ろを振り返ると清純がビートを刻みながらスティックで琴音を指し歌い続ける様に促す。

すると敏広と賢治も各自のポジションに着いて演奏し始め、加奈子も混ざり生バンド・カラオケ大会となってしまった。

フル・コーラス歌い終えバンドが演奏を締めると途端に拍手喝采が起こる。

バンドだけで無く音効さんに会場関係者、部員達も皆総出で琴音を讃えていた。

急に恥ずかしくなった琴音は逃げる様にステージ袖へと捌けようとしたが

「駄目ダメッ!ちゃんと拍手に応えなきゃ!」と敏広に通せんぼをされ、また部員達全員からもステージ中央へと押し戻される。

「皆さん雨宮琴音さんにもう一度盛大な拍手をお願いしまーす!」

殆ど晒し者だが悪い気はしない。

程なくゲネプロは再開。だが終了後に琴音は皆からのリクエストで再びステージにて今度は♪SOMEBODY’S NIGHTを歌わされるのであった。


つづく

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