ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆250

最終章:女達のトラベリン・バス


2009年12月21日 9:06AM

「お~い!麻理ちゃん、まだぁ~!?」

自宅の1階、階段前から2階の自室に居る麻理子に呼び掛ける裕司。

9時には家を出る予定だったのに過ぎても下に降りてこようとしない。

「あ~ん待ってぇ!もう少しぃ!」
「はぁ……」

思わずため息が出る。麻理子の「もう少し」は少しだった試しが無い。

「う~ん、どっちにしようかなぁ……」

化粧も身支度も全て済んだのだが直前に成って今日のコンサートに着ていくチャイナ・ドレスを迷い始めた麻理子。

当初、着る予定だった一番のお気に入りでもあるストレッチ素材の白いドレスをスーツケースから出して、もう一つの特注であつらえた薄いピンク地にショッピンのフデロゴ刺繍の入ったドレスを鏡の前で交互に合わせる。

「そっか!ホテルで裕クンに選んで貰えばいいやっ!」

女とは、こういう生き物である。

居間で裕司が胡坐をかき携帯メールを読み返していると階段をドタドタと降りる音が聞こえてきた。

思ったより早かったのでちょっと気分が楽になる裕司。

「お待たせぇ!」
「よし!それじゃ行こう!」

玄関へと向かおうとする裕司。だが

「んーっ!」

麻理子に腕を引っ張られる。

「えっ?あぁそっか!」
「うん!」

出掛け前のチューは麻理子にとって絶対に欠かせられない儀式であった。そして

「それじゃミィちゃん、イイ子でお留守番しててねぇ!」
「フニャ?」

玄関の下駄箱の上でだらしない姿で寝ているミィを抱き上げる麻理子。そして強烈なデコチューをする。

「ゥニャアァ~ッ!」

悲鳴の様な唸り声を上げるミィ。これも毎回の儀式なのだが、お蔭で真っ白なミィの身体の内、額だけはピンクに染まってしまっていた。

スーツケースを重そうに持って玄関を出ると

「あら、お出掛け?」

お隣さんと顔を合わせる。

「あっ、お早うございまーす!」
「はい、ちょっと都内へ」
「いつも仲良いわねぇ!気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとうございまーす!」

既に、ご近所とも顔馴染みの麻理子。

まだ籍は入れていないが一緒に暮らして約三ヶ月。

麻理子は調布の総合病院を辞め現在は川崎市内の市民病院の受付で働いている。

そして、この日は矢沢永吉のコンサート・ツアー最終日。

二人共、今日、明日と仕事を休んで気合い充分で九段下へと向かった。

つづく

コメント

  1. らきあ より:

    二人の醸し出すフワッとした雰囲気が伝わってきますね。
    読んでいて思わずニヤニヤしてしまいました。
    また先日はシャバダバの情報ありがとうございました。
    是非機会を作り行ってみたいですね。
    最終章、今後の展開を楽しみにしています。
    また、第伍章、沢山の感動を有難うございました。
    活字を読んで泣けてきたの、久しぶりでした。

  2. AKIRA より:

    らきあさん♪^^毎度です
    次回はもっとニヤニヤして頂けると思います(笑)
    洒場堕場に関しては、しつこい様ですが不定休なお店で最近は休みが多いらしいので行かれる際には、お気をつけ下さいませ
    また嬉しいご感想ありがとうございます
    第伍章は、この物語のメインでして書き手としても、かなり思い入れの強い箇所と成りました
    故に文章化にエラい苦労しましたが(笑)
    女トラも、もう少しで終わりますが、どうか最後迄御付合い下さいませ

  3. ぺこちゃん より:

    女とらもいよいよ最終章ですねぴかぴか(新しい)
    怒涛の第五章が、いまだに胸にしみていますが、
    最終章は、うってかわって、
    ほのぼのと温かい二人の空気感が
    とても嬉しく優しい気持ちになりますネ(^_^)
    ミィちゃん猫の行く末も心配でしたが、
    二人の元に引き取られて、いちばん良かった気がしますわーい(嬉しい顔)
    最終章ぴかぴか(新しい)
    最後まで楽しみにしていますねウィンク指でOK

  4. AKIRA より:

    ぺこちゃんさん♪^^毎度です
    書いてる方としては、やっとここまで来たかって感じですが、いつも楽しんで頂きセンキューどーもです
    これからは、この雰囲気に徐々に徐々にとYAZAWAな空気が加わっていきますので楽しみにしていて下さいヨロシク

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