2階に上がると、とてもリフォームをしている様には見えなかった。
不信感を抱きながら自室のドアを開ける絵美里。
だが、室内は特に変わった様子は見られない。
否、厳密に言えば数か月前とは違った。
部屋全体が綺麗に整理整頓されているのだ。
しかも埃一つ無い程に掃除が行き届いている。
母と共に家を出た時は時間も無く慌てていた事もあり、多少、散らかったまま部屋を後にしたのに今は丸でモデルルームの様である。
妙な違和感を感じながら部屋全体を見回す。すると
「な、何?この臭い…」
今迄、嗅いだ事の無い奇妙な異臭が、微かではあるが絵美里の鼻を付いた。
気になった物の本来の目的を果たそうと絵美里はクロゼットから海外旅行用に買って貰った大型のスーツケースを出して広げる。
早く帰宅したかったので冬服の制服や私服を無造作に放り込む。
だが捗らない。持っていきたい物が次々に出来てしまったのだ。
「んーっ、これも必要かなぁ。あっ、これも!」
色々、物色しつつ、ふと先程【少年A】の言っていたリフォームとは何だったのか?との疑念が湧いてきた。
だが考えても仕方が無いと思い直し強引にスーツケースを閉めて廊下へと向かう。
その時、部屋の左側の片隅に何かが無造作に落ちている事に絵美里は気付いた。
整理されている部屋に似つかわしくない様にポツンと放置されている。
近づいてみると
「ちょ、これっ!!」
落ちていたのは絵美里の下着であった。
しゃがんで手に取る。
先程から感じる異臭の原因は、これの様だ。
何故、こんな所に自分の下着が?何より何故、こんな変な臭いを発しているのか?
そして次の瞬間
「!!」
突然、何かが首に巻きついてきた。
「ぐ…ん…ん……」
呼吸が出来なくなりパニックに陥る絵美里。
反射的に首に巻き付いた物を外そうと両手が喉元へと向かうが全く力が入らない。
やがて苦しみが奇妙な開放感へと変わると絵美里は白目を向いて意識を失った。
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