黒いラベルのスクエアボトルで知られる「ジャックダニエル」は、世界で最も愛されるアメリカンウィスキーのひとつです。特にロックやカントリーのミュージシャンたちにとっては、単なるお酒を超えた“仲間”のような存在。ライブのステージ裏や歌詞の中に登場し、時にはアーティスト自身の象徴にもなってきました。今回は、ジャックダニエルと音楽シーンを彩ったスターたちのエピソードをまとめてご紹介します。

世界で愛される「ジャックダニエル」とは?
ウィスキーに詳しくない人でも、一度は耳にしたことがある名前が「ジャックダニエル」。黒いラベルのスクエアボトルは、世界中のバーや映画のワンシーンでもおなじみです。実は、ジャックダニエルはアメリカ・テネシー州で生まれた「テネシーウィスキー」の代表格。スコッチやバーボンとは一味違った個性を持っています。
歴史と誕生の背景
ジャックダニエルは、1866年にジャスパー・ニュートン“ジャック”ダニエルによって創業されました。

アメリカで最も古い登録蒸留所として知られており、150年以上の歴史を誇ります。蒸留所があるのはテネシー州リンチバーグ。人口わずか数千人の小さな町ですが、世界的ブランドを育んだ場所としてウィスキー好きの聖地になっています。
テネシーウィスキーの特徴
ジャックダニエルが「バーボン」ではなく「テネシーウィスキー」と呼ばれる理由は、特有の製法にあります。その最大の特徴が「チャコール・メローイング製法」。これは蒸留後の原酒をサトウカエデの炭でろ過する工程で、雑味を取り除き、スムーズで飲みやすい味わいを生み出します。まろやかさとほのかな甘みが、多くのファンを惹きつける理由のひとつです。
定番のラインナップ
ジャックダニエルにはいくつかの代表的な銘柄があります。
- オールドNo.7(ブラックラベル)
最も有名な定番ボトル。柔らかく、ほんのり甘い口当たりでストレートからハイボールまで幅広く楽しめます。

- シングルバレル
ひとつの樽から瓶詰めされる限定品。個性豊かな香りと力強い味わいを持ち、ウィスキー上級者から人気。

- ハニー
はちみつを加えたリキュールタイプ。甘く飲みやすいので、女性や初心者にもおすすめ。




飲み方 楽しみ方
ジャックダニエルは、その柔らかい味わいから飲み方の自由度が高いのも魅力。ストレートでじっくり味わうのはもちろん、ロックやソーダ割り、カクテルベースとしても大活躍します。特に「ジャックコーク(ジャックダニエル+コーラ)」は定番中の定番。バーはもちろん、自宅でも気軽に楽しめるカクテルで、近年では製品化もされてます。


豆知識:蒸留所がある町は「禁酒の町」
面白いことに、ジャックダニエル蒸留所のあるリンチバーグは「禁酒郡」に指定されており、地元の酒屋ではアルコールが販売できません。蒸留所でしか買えない限定ボトルも存在し、観光客の人気を集めています。
ジャックダニエル × ミュージシャン
■ レミー・キルミスター(Motörhead)と「ジャック&コーク」

モーターヘッドのレミーは、生涯を通して「ジャック&コーク(Jack & Coke)」を愛飲していたことで有名です。ファンの間では“ジャックコーク=レミー”と呼ばれるほどで、亡くなった後にはカクテル名を「The Lemmy」に改名しようという署名活動まで起こりました。ロック界において、ジャックがいかに文化的アイコンとなっているかを象徴するエピソードです。
■ キース・リチャーズ(The Rolling Stones)

ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズもまたジャックの熱心な愛飲家。ステージ裏でボトルを片手にする姿は数多く写真に収められており、本人も「ジャックが声を助けてくれる」と冗談交じりに語っています。彼の存在は“ジャック=ロックンロール”のイメージを決定づけました。
■ フランク・シナトラ ― ジャックを世界に広めた伝説

ジャズ/ポップ界の大スター、フランク・シナトラもジャックの熱心なファンでした。公式な場でジャックを飲む姿が話題になり、ブランドの人気を一気に押し上げたとも言われています。さらに、彼の棺には愛用のジャックダニエルのボトルが納められたという逸話まで残っています。
■ エリック・チャーチ(カントリー歌手)との公式コラボ

近年ではカントリーシンガーのエリック・チャーチが、蒸留所と公式にコラボレーション。彼のために選ばれた「シングルバレル・セレクト」は限定商品として販売され、ファンの間で大きな話題になりました。
■ マイケル・アンソニー(Van Halen)と“ジャックベース”

ヴァン・ヘイレンの元ベーシスト、マイケル・アンソニーはジャックのラベルを模した特注ベースをライブで使用。音だけでなく視覚的にも“ジャック”をバンドの一部に取り入れました。
■スラッシュ(Guns N’ Roses)

ガンズ&ローゼスのギタリスト、スラッシュは、一時期、ボトルを常に持ち歩くほどのヘビー・ドランカーでした。(現在はほとんど禁酒状態との事)
■ ジョニー・キャッシュとカントリーの精神
テネシー出身の大スター、ジョニー・キャッシュはジャックの蒸留所があるリンチバーグを訪れたこともあり、南部の音楽文化とジャックダニエルを結びつける存在として語られています。
■ 近年の動き ― 楽曲に登場するジャック
現代のアーティストもジャックを歌詞に登場させています。2024年にはカントリーラッパーのシャブージー(Shaboozey)が「They know me and Jack Daniel’s got a history」と歌い、ヒットソングを通して新しい世代にブランドを印象づけました。
まとめ
ジャックダニエルは、ただのウィスキーではなく“ロックンロールの象徴”として音楽史に深く刻まれています。レミーやリチャーズのような伝説的ロッカーから、カントリーや現代のシンガーまで、世代やジャンルを超えて愛され続けてきました。ステージ裏のボトルや歌詞の一節に現れるジャックは、アーティストにとっての“相棒”であり、リスナーにとっては音楽と酒が織りなすライフスタイルの象徴なのです。


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