ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆020

森野楓は麻理子の母、香澄の5歳下の妹で聖蹟桜ヶ丘の郵便局職員であった。


美人だが結婚願望が無く独身だったので姪っ子の麻理子を我が娘の様に可愛がり、また麻理子の父、孝之が家族サービスに消極的であった為、麻理子をディズニーランドや海、プール等のレジャーに連れて行ってくれるのも楓だったので麻理子もよく懐いていた。


その叔母、楓の趣味がドライブと洋楽鑑賞。


ABBAやホール&オーツといったソフトな物からディープ・パープルやKISSの様なハードな物まで幅広く聴いていたが中でも特に好きだったのがビリー・ジョエルで麻理子がビリーを聴く様になったのも、その影響である。


「麻理子はどれが1番お気に入り?」
「う~ん」


小学校低学年だった頃のある日、楓に聞かれて数多いコレクションの中から麻理子がちょっと悩んで選んだのが『ニューヨーク52番街《52nd Street》』


理由はその中の2曲目の♪オネスティが当時の麻理子の最も好きな曲だからであった。


「いい趣味だね。さすが私の姪っ子!」


数日後、その日は麻理子の誕生日で楓は最新のCDラジカセと一緒に『52番街』のCDを麻理子にプレゼントしてくれた。
そしてそれは麻理子が初めて所有したCDであった。


「麻理子が大きくなったら一緒にビリーのコンサートに行こうね」
「うん!」


80年代、ビリー・ジョエルは割りと繁盛に来日していたので楓は麻理子をコンサートに連れて行きたいと思っていたのだが、その度に「小学生がロックのコンサートなんて、とんでもない!」とゆう堅物な孝之の反対を受けて敢無く断念。


行く気満々だった麻理子を落胆させてしまう故に、その様な約束が二人の間で交わされた。


だが、その約束が果たされる事は無かった。
麻理子が中学3年生の頃に楓が癌に蝕まれている事が発覚。
手術を受けるも時既に遅く麻理子の高校の合格発表の日に、この世を去ってしまう。


「おめでとう麻理子・・・・・本当によかったね・・・」


合格通知を持って病院に駆けつけた麻理子に掛けた、この言葉を最後に楓は永遠の眠りに就いた。


もう長くはないと聞いていたので覚悟はしていたが悲しくない訳がない。
だが同時に快活で美人だった楓が抗癌剤の副作用で変わり果て末期の癌による激しい痛みに苦しんでる姿は麻理子から見ても痛々しく辛かった。


《もう苦しい思いをしないでいいんだ…》


麻理子は自分に、そう言い聞かせ最愛の叔母を亡くした現実を受け入れようと努力した。


四十九日を終えた日に楓の遺品を預かっていた母方の祖父母の自宅にて形見分けが行われた。
香澄と祖父母は麻理子に最初に選ぶ権利を与えてくれ、麻理子は楓が愛したビリーと様々な音楽を選んだ。
それ故にビリー・ジョエルのCDの何枚かは麻理子が元々持っていた物と楓から譲り受けた物とが混在していた。


麻理子にとってビリーの唄は楓との絆であった。
そしてそれは麻理子に新たな絆を与える事になる。

つづく


コメント

  1. chinatown より:

    こんにちわ。
    №10~20話まで一気読みしました~♪
    キャライメージ、山本麻里子=皆藤愛子さんって、お嬢様でポーっとした感じがピッタリですね。
    小栗旬君も出てくるし、ドラマできますね~。
    楓は誰かな?とか自分でキャラ設定考えながら読んでると楽しいです。

  2. AKIRA より:

    chinatownさん♪^^
    ありがとうございます
    当初は麻理子のイメージは他の方だったんですけど
    書き進めていくウチに皆藤愛子の方がしっくり来たもんで変更しました
    万に一つも有り得ませんが
    もしドラマの話が来たら二つ返事でOKします(笑)
    それから読んで下さる方々が独自のキャラ設定をして
    楽しんでくれたらそれもまた嬉しいです

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