ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆035

約束の土曜日。


里香は息子の永悟を連れて予定時間の7時きっかりにOpen Your Heartに訪れた。


扉には『本日貸切』のプレートが掛かっている。
扉を開けると♪ラスト・シーンが聴こえてきた。


「いらっしゃい」
「こんばんは。今日はヨロシクお願いします」
「よく来てくれたわね」
眞由美が笑顔で出迎える。


里香に促され永悟が
「お久し振りです。その説は大変お世話になりました」と爽やかに挨拶する。
今時の中学生とは思えない位に礼儀正しい。
「いいからいいから。それにしても大きくなったわねぇ」
手を伸ばし永悟の両頬に触れる眞由美。
「それにいい男になったじゃない。学校じゃモテるでしょ」
「い、いえ、そんな事は……」と照れる永悟。
「今日はあなたとお母さんに紹介したい人が居るの。楽しんでいってね」
「は、はい」
「返事の仕方がお母さんそっくりね」と眞由美が笑う。


店には眞由美の他に里香は既に面識のある遥子と麻理子、そして真純と愛美、それから真純の友人の女性が3人居り眞由美は一人一人、里香と永悟に丁寧に紹介してくれた。


女性だらけの中、一人ポツンと男だけで永悟は気恥ずかしい気分だったがカウンターの奥に一人、大きな体の男を見つけた。


「今日あなたに一番紹介したいのは、あの人よ」と眞由美。
「若林拳斗です。ヨロシクな」
「初めまして。須我…神園永悟です」
元々の苗字が須我であった為に今でも時々、昔の名前が口をついてしまう。
2メートル近い大きな体に威圧感を感じ緊張する永悟。
だが握られたその大きな手は柔らかく微笑みも優しかった。


「今日は男同士と女同士、存分に語り合いましょう」と眞由美。
永悟は拳斗に肩を抱かれ奥のテーブルに促される。


ソファに座ると眞由美がお絞りとコースターを持ってきてくれた。


「この人は空手の黒帯でね。凄く強くて昔は相当ヤンチャしてたんだけど根は優しい人だから安心して」
緊張の色を隠せない永悟をリラックスさせようとする眞由美。
「始めの説明は要らないだろ。それに人の事、言えるか?」と拳斗。
「いいじゃない。男の子には判り易いでしょ。それにあなたこそ余計な事言わないの!それじゃ私はあなたのお母さんとお喋りしてるから」


と言って眞由美は隣のテーブルに移って行った。
すると今度は入れ替わりで愛美がやってきた。
「飲み物は何がいい?」
「あ、え、えっと……」
「コーラでいいかしら?」
「あ、はい」
「拳斗さんは?」
「今はペリエにしとくよ」
「りょーかーい♪」


カウンターに戻ると愛美は手際良く飲み物の準備を終えて戻ってきた。
ペリエ、コーラをそれぞれテーブルに置いてシードルを片手に愛美は永悟の隣に座る。


「あっちじゃなくていいのか?」と拳斗。
「私はレズじゃありません」
「私等だって違うわよ!」と真純が叫び笑いが起こる。
「それじゃ全員集まったから始めるわよ」と眞由美。
「今日は新しい仲間を歓迎する為にこうゆう席を設けた訳だけど、みんな、神園さん母子をヨロシクね」
眞由美の言葉に拍手が起こる。
これだけで里香は感激して目を潤ませていた。


「それじゃ里香ちゃんと永悟君を歓迎して」
全員がグラスを高く掲げる。
「ヨロシクね」
愛美が永悟に接近してグラスを合わせる。
「は、はい。こちらこそ…」
思春期の少年らしい永悟の反応に大人達から笑みが漏れた。

つづく

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