ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆074

WOWOWの生中継でYAZAWAの洗礼を受けた3人は翌日になると音源収集の為に地元のCDショップに行ってみた。
だが、そこには矢沢永吉のCDが殆ど置いてなく仕方が無いので渋谷まで出て、あらゆるCDショップをハシゴして有り金叩いてアルバムを買い捲った。
しかし高校生であるが故に軍資金が少なく全作品を買うのは不可能。
そこで3人がそれぞれ違う音源を買う事によって出来るだけ多くの作品を手に入れカセットテープにダビングし合ってコレクションを増やしていき、その後、成りあがりとゆう本の存在を知り当然これも購入。


また年が明けた頃には赤坂にダイヤモンド・ムーンとゆうオフィシャルショップがある事も知ったのだが、この頃の3人にはまだDMまでに足を運ぶ度胸は無かった。
やがてバンドの新たなレパートリーは総てYAZAWA一色となりそれを機にバンド名も永ちゃんが、かつて組んでたバンド『ヤマト』を参考に『YASHIMA』に変更。
因みにヤシマ(八島・八洲)とは基本、ヤマト(大和)と同じ意味で、また、敏広達の苗字の頭文字(矢野、汐崎、松岡)からそれぞれ充てて名付けられた物である。


「やっぱでも一度は生で観てみたいよな」
「そうだよなぁ」
敏広の言葉に頷く賢治と裕司。
「でも永ちゃんのコンサートだろ?」
「う~ん・・・」
3人も矢沢永吉のコンサートが、ある意味特殊である事は何となく知っていた。
「だけど族ばかりって訳じゃないだろ」
「でもなぁ・・・」
新規のファンが自らその特殊な場に赴くには、かなりの踏ん切りを要する。
そんなある日、新聞に矢沢永吉の横浜スタジアムでのコンサートの告知広告が掲載されてるのを裕司が発見。
「浜スタならそんな遠くない」
「行くか!」
「行こうぜ!」
「当たって砕けろだ!」
盛り上がった3人は掲載されてる手続きに従い代金を振り込み、チケットを確保。

そして1995年9月9日。
遂に生YAZAWAを体験する事になる。


JR関内駅を降りてから、正確にはそこに至るまでの京浜東北線の車中から既に敏広達は後悔し始めていた。
廻りにいる独特の雰囲気を醸し出してるリーゼントの集団に完全に飲まれてしまっていたのだ。
いわゆる矢沢モードの人、人、人。
敏広達は自分達がここに居てはいけないんじゃないかとゆう妙な強迫観念にかられて居た堪れない気分になっていた。
「……やっぱり帰ろう」
「そ、その方がいいかもな…」
完璧にローなテンションの敏広と賢治。
「何、言ってんだよ!ここまで来といて!」
「お、おい、大声出すなって」
二人が小声で裕司を制止する。
「高い金出してチケット買ったんだ!俺は行くぞ!」
そういう裕司も内心はビビっていた。
だがこういった場面で一番思い切りの良い行動が出来るのも裕司であった。
早歩きでスタジアムに向う裕司に釣られる様に付いて行く二人。
入り口ゲートを探しているとグッズ売り場のテントを見つけたので念願のビーチ・タオルを買う為に列に並ぶ。
値段を見て正直5000円は高いと感じたし高校生にとっては痛い出費であったが、それでもE.YAZAWAのロゴが入ったタオルと一緒にゴールドとシルバーのロゴが入ったまっさらな黒い袋を渡されると遂に手に入れたとゆう喜びの方が大きくなり気分が高まった。
「やったな!」
「これが永ちゃんのタオルだ!」
3人は今すぐ封を開けて肩に掛けたい衝動に駆られた。
だが目立つ様な事をして怖い思いをしたくないと自己防衛本能が働いて、そそくさと袋に未開封のタオルを入れて小さくなりながらその場を立ち去った。
そんな3人に気付いた幾人かの矢沢ファンは彼等を微笑ましく思っていたのだが今の3人にはその視線すら恐怖心を煽る物でしかなかった。

つづく

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました