ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆066

「でもメドゥーサは元々は美しい女性だったんですよ」
バースデー・パーティーの時、そっち方面に明るい麻理子が話し始める。


「じゃあ何だって化物なんかに?」と眞由美。
他の者が言い出したのなら、それこそ一睨みで終わりだが麻理子だったので眞由美も聞く耳を持った。


「諸説あるんですが、よく言われてるのは女神アテナの逆鱗に触れて醜い姿に変えられてしまったと」
「逆鱗?」
「アテナより美しいと自惚れたとか、アテナの神殿で男性と逢引きしてたとか」
「それとメドゥーサは『支配する女』って意味も無かったっけ?」と拳斗。
「そうです!ギリシャ語で『女王』とゆう意味も」
「なら眞由美ちゃんにピッタリじゃない!」と真純が笑う。
「でもぉ~・・・頭が蛇のバケモンなんでしょ?」
「は、はい・・・まぁ・・・」


頭、正確には髪が無数の蛇で出来ているとゆう所がメドゥーサの一番の特徴である。
「それならまだアッコさん呼ばわりされる方がマシだわ」
ドッと笑いが起こる。


だがこの時、遥子は敏広だけが笑っていないのを見逃さなかった。


「それで思い出しました!」
里香はネットに氾濫してる眞由美の和田アキ子似説の事を話し出した。


「どうしてそんなデマが広まってるのか全く理解出来ないんです」
「まぁ所詮ネットだからねぇ」と真純。
「必ずしも正確な情報ばかりじゃないさ」と拳斗。
「だけど、その書き込みを見た時は戸惑いました。実際の眞由美さんは凄く女性的で素敵なのに」
「あら、ありがとう。嬉しいわ」
「だけどそれって本家アッコさんには失礼な物言いね」
真純の言葉にまた笑いが起こる。


ここでも敏広は笑っていなかった。
「敏広君どうしたの?」
「へっ?な、何が?」
遥子の問い掛けに声が裏返る。
「何だかさっきから心ここに有らずって感じじゃない」
「い、いや、そんな事無いよ。あははははは」
「・・・何か変ねぇ」と真純。
「白状しちゃえよ敏広」
「ば、おい賢治!」
「白状って?」と遥子。
「・・・まさかアンタ」
眞由美の表情が見る見る険しくなって行く。
さっきまでの和やかな雰囲気が徐々に凍り付いてゆく。
「さ、さいならぁ~っ!!」
敏広は放たれた矢の如くパーティー会場から飛び出して行った。
「こらぁ!待ちやがれ!!」


賢治と裕司によれば、とあるネットの掲示板にて偶々眞由美の店に関するトピを見つけ敏広が姉御肌な人とゆう意味で『ママさんは和〇ア〇子みたいな人』と洒落で書き込んだら何故か外見までアッコさん似だとゆうデマが次々に書き込まれ気が付けばネットでは眞由美=アッコさんとゆう既成事実が出来上がってしまったのだった。



「そろそろ許してあげてよ」
「私はもう怒ってないわよ」と真純の言葉に苦笑する眞由美。
「あの使いっパシリ達が居ないと意外に不便なのよねぇ」
「そっちが理由?」
「結構使い勝手、いいのよ」
真純の言葉に笑う眞由美と里香。


バースデー・パーティーの時も敏広達3人は真純の指示で六郷土手には向わず会場で留守番をさせられていた。


「それに先週の土曜もウチに来たわよ」
「あの3人が普通にここに来るなんて珍しいわね」
家が近所じゃ無い為、敏広達がイベント以外でOYHに来る事は先ず無い。
「いや、裕司君以外の二人。それと遥子ちゃんが一緒にね」
「益々、珍しい組み合わせね」
「何か企んでるみたいよ」と笑う眞由美。
「企んでるって?」
「裕司君の為に何かをね」
と眞由美の何か含ませる様な物言いと同時に真純の携帯が鳴った。

つづく

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