ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆075

残暑厳しい、よく晴れた日だった。
午後6時を廻っても空は青く、ギラつく様な日差しがスタジアム内に降り注ぐ。
すり鉢上になった会場内を3塁側スタンドの中間辺りから見渡す敏広達。
3人共コンサートは初めてでは無いが野外の、しかもスタジアムクラスのライヴはこれが初体験。
3人はまるで自分達がこれからライヴを演るかの様な緊張感に震えていた。
だがその震えは何処か心地良く気分がハイになってゆく物で早くライヴが始まって欲しいとゆうワクワク感と、いつまでもこの緊張感を味わっていたいとゆう相反する感情が入り混じり例え様の無い高揚感に胸が躍るのであった。
続々とアリーナ、スタンドに入ってくるYAZAWAファン。
それに伴い喧騒も次第に大きくなってゆき、またそれが会場内の熱気を徐々に徐々にと押し上げていく様にも感じ得た。
だがその一方で一抹の不安があった。
よりによって3人の前後左右の席だけが丸々空いているのだ。
それが何を意味しているのか敏広達も充分理解していた。
気が付けば白スーツを着たリーゼントの怖そうなお兄さん方に囲まれてしまった3人。
さっきの心地良い震えが一転して恐怖に怯えるそれに変わる。
3人は極力、気配を消そうと体を縮込ませ呼吸も出来る限り押えようとした。


そんな時
「おう、君等、高校生か?」
敏広の左隣の席の白スーツのお兄さんが声を掛けてきた。
「あ、は、はい」
ビクッとしながらも返事を返す敏広達。
「俺達も君等位の頃に永ちゃんファンになったんだよ」
何だか口調も表情も優しい。
「永ちゃんのコンサートは初めてか?」
「あ、はい」
「嬉しいネェ!お前等の様な若い世代も永ちゃんの良さが判ってくれてよぉ」
「昔を思い出すぜ」
「よく来たな。今日は盛り上がろうぜ!」
「よ、ヨロシクお願いします」
緊張感は拭い切れなかったが友好的な態度で接してくれる、そのお兄さん方のお陰で少し気分が楽になった。
それから反対側や前後のグループのお兄さん方も気さくに声を掛けてきてくれて今となっては会話の中身は忘れてしまったが始めの恐怖心が嘘の様に消えて無くなり3人は落ち着く事が出来た。
やがて日が傾きスタジアムの照明が灯る。
燃えるサンセットも西の彼方へ沈み火照った街を浜風が冷ます中スタジアム内だけはマグマの様に沸きあがり爆発するのを今か今かと待ち侘びていた。

つづく

コメント

  1. chinatown より:

    高校生3人が、初めて矢沢に出会って初めてのコンサートが浜スタのJUST TONIGHTだなんて(≧▼≦)
    そりゃあ、ぶっ飛びますよね!
    私までドキドキします☆

  2. AKIRA より:

    chinatownさん♪^^毎度です
    ドキドキして頂き恐縮です
    次回いよいよ本番ですんで3人と一緒に弾けちゃって下さい(笑)
    今後もヨロシクお願いします

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