翌日の月曜日。眞由美は学校を途中で抜け出しセーラー服姿のまま長兄のZ2に乗って横浦賀高校へと向った。
神奈川県立横浦賀高校は県内でも有数の進学校で毎年多くの東大合格者を出してる男子校。
長いスカートを靡かせ段差もなんのその事務室窓口のまん前まで走り込む眞由美。
エントランス内に、けたたましく鳴り響くエンジン音に事務室の職員達が唖然とする。
エンジンを切りバイクから降りると眞由美は窓口に向った。
「すみませーん!若林拳斗君に逢いに来たんですけどーっ!!」
窓口の女性職員が固まっている所に
「な、何だ貴様はーっ!!」
廊下から二人の男の教師が眞由美に叫んだ。
一人はガリガリに痩せた眼鏡の出っ歯。もう一人はずんぐりむっくりのジャージ姿で、いかにも生活指導の体育の教師といった風体である。
「一体何しに来たっ!」
「だから若林拳斗君に逢いに来たのよ」
「若林君に何の用だ!」とガリ眼鏡。実は、こいつが拳斗の担任だったりする。
「そんなのアンタには関係無いでしょ!」
時は丁度、昼休みが始まったばかり。他の教師や生徒達も何事かと集まってくる。
「我が校の生徒はお前の様なズベ公に用は無い!とっとと帰れっ!」
ピキッ!
「ズベ公とは御挨拶ねぇ」
眞由美に睨み付けられるジャージ。その視線に一瞬たじろく。
そして昨年まで横浜の学校に赴任していたジャージは眞由美の顔を見て何かを思い出したかの様にハッっとした。
「も!もしや、お前はあのハマのメドゥ…」
ブチッ!!
ドカッ!!!
次の瞬間、眞由美の右フックがジャージ教師の左上顎に炸裂。
一回転して倒れ込み失神したまま動かないその姿を見てどよめく生徒達。
「ひぃ~い!け・・警察呼ぶぞっ!」とガリ眼鏡。
「だから警察なんかより若林拳斗を呼んでよぉ!そしたら大人しく帰るわよ!」
その時、野次馬の中から一人の生徒が前に出てきた。
「わ、若林君!」
「あら!」
拳斗は眞由美の方へと近づいてゆく。
「わ、若林君!危険だから下がってなさい!この女と何があったか知らないが直ぐに警察を呼ぶから!」
「いえ、彼女は知り合いです」
「ええっ!!」驚愕するガリ眼鏡。
向かい合う眞由美と拳斗。眞由美は拳斗の姿を見てクスッと笑った。
「昨日とは随分、雰囲気が違うのね」
そう言われ苦笑する拳斗。
髪はサラサラの直毛で真ん中分け。制服も標準のブレザーで、どう見ても真面目な普通の高校生であった。
「学校では一応学生らしくしないとな」
「それも似合ってるわよ」
「そっちのセーラーもいいじゃないか」
「あら、ありがとう」
暫し見詰め合う。
「それで?そんな事を言う為にワザワザ横浜から来た訳じゃないだろう?」
その言葉に眞由美は懐から封筒を取り出して拳斗に渡した。
受け取り中身を見る拳斗。現金が入っている。
「随分、多いな」
「謝礼も混ざってるわ」
「それは受け取れないな。実費だけは折角だから貰っておこう」
拳斗はバッテリーの代金だけ抜き取り残金の入った封筒を眞由美に渡そうとする。
「私が大人しく受け取るとでも思って?」
眞由美は腕を後ろに廻し封筒を受け取ろうとしない。
「参ったね。力ずくで渡す訳にもいかないし・・・」
「それなら使い道を考えてよ」
「使い道?」
怪訝な表情の拳斗。
「私、まだお昼ご飯食べてないの」
眞由美は踵を返しZ2へと向う。
「お腹空いちゃったわ。この辺に美味しいお店無いかしら?」
「あるよ。そこの国道沿いを~」
「そんな説明じゃ判らないわ」
拳斗の説明を遮る様に言うと眞由美はバイクに跨った。だが座ったポジションはリアシートで前は空けてある。
「連れてってよ」
ジッと拳斗を見詰める。
拳斗はフッと笑みを漏らすとZ2に跨りキーを廻した。
さりげなく拳斗の胴に腕を廻す眞由美。
そして2人を乗せたZ2は颯爽と走り去って行った。
その光景を呆然と見届けるしか無いガリ眼鏡と生徒達。
「若林君…………バイクは校則違反だよ」
コメント
ふぅ~~!!
眞由美も拳斗もカッコイィ~☆☆☆
お似合いの二人ですね(^-^)
Chinatownさん♪^^いつもありがとうございます
これから数回、若き日の眞由美と拳斗の物語が続きますんでヨロシクです