ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆106

お祭り騒ぎの仲間達。
ワンコーラス歌った所で曲はエンディングを迎え一斉に拍手と万歳三唱が行われる。

遥子、眞由美、拳斗、愛美、真純、そして雄一郎が二人を祝福する。
麻理子は急に恥かしくなったのか真っ赤になって下を向いてしまった。

「やったね麻理子!」
「良かったねぇ~裕司君!」
「一時はどうなる事かと思ったぞ!!」
「私も!」
マスクを外し眼鏡をかける愛美。
「まぁ結果オーライじゃない」
ここで真純は眼鏡とチョビ髭を外した。
「麻理子ちゃん、ありがとう!」
雄一郎はちょっと涙ぐんでいた。

ここでドラムを叩いていた柏田哲也が改めて麻理子に紹介される。
哲也は敏広と賢治の大学での2年先輩でYAZAWAファンでは無いが当時、自分のバンドと平行してYASHIMAの助っ人を、やってくれていた。

「さて第一部は無事完了!本番はこれからよ!!」

それから麻理子のバースデー・パーティーは酒と歌で大いに盛り上がった。
YASHIMAの生バンドによるカラオケ大会や敏広がヴォーカルを取る大学時代のYASHIMAのライヴの再現。
ここではポリスの♪見つめていたい、イーグルスの♪ホテル・カリフォルニア、ラッシュの♪YYZ等、永ちゃん以外の曲が演奏されたりと盛り沢山の宴となった。

そして最後は再び裕司がリード・ヴォーカルでのライヴが披露され♪鎖を引きちぎれ、♪RUN&RUN、また本日主役の麻理子からビリー・ジョエルの♪ピアノマンもリクエストされ、ここでは裕司と麻理子は完全に二人の世界に浸ってしまい周囲に思い切り冷かされたりもした。

やがて時計が11時を指し4時間にも及ぶパーティーは終了。

仲間達のお陰で、この日は麻理子にとって忘れられない大切な思い出となった。

麻理子に贈られたバースデープレゼントや花束が溢れんばかりに入ったダンボール箱を裕司が抱え、その左腕に麻理子が腕を絡める。

「それじゃ気をつけて帰ってね!」
「裕司君、ちゃんと麻理子ちゃんを責任持って送りなさいよ!」

二人を見送る仲間達。
皆、親指を立ててニカッっと笑ってる。
その時、敏広がドサクサに紛れて人差し指と中指の間に親指を挟んでいるのに気付いた賢治が敏広の頭をボカッっと叩く。
照れ臭そうな笑みを浮べながらエレベーターに乗り込む二人。

「あ、それじゃお先に失礼します」
「おやすみーっ!」
手を振る仲間達。ドアが閉まる。

「全く世話の焼けるカップルだ事」
「告白でこれだけ手間が掛かるんだからねぇ」
ぼやきながらも楽しそうな真純と眞由美。
「こりゃプロポーズの時は武道館クラスの会場が必要かもな」
「今の内に押えておこうかしら」
拳斗と真純の冗談に笑いが起こる。
「しかしバンドもそうだが本当に歌、上手いんだな!」
「でしょ?」
「私も聴く迄、信じられなかったわ!」



一方、裕司と麻理子は直ぐ近くのコイン・パーキングに居た。

「ねぇ、ほっぺ大丈夫?」
「あぁ、うん。大丈夫」

本当はまだ痛むのだが愛美が持ってきてくれた氷入りのオシボリで冷やしてたお陰で大分痛みも和らいでいた。
「麻理子ちゃんこそ気分はどう?結構、飲んでたみたいだったけど」
「うん。何だかいい気持ち」
裕司は麻理子の送迎の役目があるので飲酒はしていないが麻理子は愛美の作ってくれるカクテルが美味しいので何杯も御替りをしていた。
だが顔色がほんのり赤いだけで普段と変わらない様に見える。
シルビアのハッチを開けダンボールをそっと置く。
麻理子を助手席に乗せ料金を払い運転席に回りこむ。
「こんな時間だから今日は家まで送るよ」
いつものドライブ・デートの時は調布駅のロータリーで待ち合わせで帰りもそこ迄であった。
キーを廻しエンジンを掛ける。
「麻理子ちゃんのお家って調布の…!」
シフトノブに手を伸ばした裕司の左手の上にソッと手を添える麻理子。
「帰りたくない」
「えっ!?」
麻理子はそのまま裕司の腕に抱きついた。
「そ、そ、それって………」
うろたえる裕司。切なそうな表情のまま俯いて何も言わない麻理子。
流石に裕司でも麻理子が何を訴えているのか、何を望んでいるのか理解出来た。
腕に伝わる麻理子の柔らかい胸の感触に鼓動が早くなり下腹も熱くなってしまう。
裕司は調布方面とは違う中央高速近辺のラブホエリアへと車を走らせた。

つづく


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