ネット小説 web小説【人権剥奪】014

左肩と首の辺りに手を添え苦痛に苦しむ表情の【少年A】は立ち上がると同時に脱兎の如く部屋を飛び出そうとした。

「待てっ!!」

咄嗟に飛び掛かる忠雄。

肩を捕まれた【少年A】は振り向き様に忠雄を右の拳で殴る。

「ぐっ!」

反射的に左腕でガードすると忠雄は右掌で【少年A】の頬を力任せに叩いた。

バコッ!

廊下の階段手摺によろける【少年A】

その胸倉を掴む忠雄。

「貴様かっ!貴様がやったのかっ!!」

興奮状態で何度も【少年A】の身体を揺さぶる。だが

「うぉっ!」

今度は突き飛ばされ尻餅を着く。

走り出し階段を駆け下りようとする【少年A】

それを見て忠雄はヘッドスライディングをする様に【少年A】の足元へと飛び込み、その足首を掴んだ。

「わぁっ!」

バランスを崩した【少年A】が前のめりに倒れる。

バタッ!

倒れた反動で忠雄の手が離されると【少年A】の身体は、そのまま階段を転げ落ちた。

ガッ!ガッ!ガタッ!ガッタッタッタ!バターン!

凄まじい衝撃音が一階廊下に響き渡る。

立ち上がり階段を駆け下りる忠雄。

倒れたままの【少年A】の胸倉を再び掴む。

「よくも…よくも大事な娘をーっ!!」

忠雄は力任せに【少年A】の顔を拳で殴りつけた。

ガッ!!

最早、正気では無かった。今の忠雄の精神状態、それは、ただただ愛する娘を凌辱された事に対する復讐心、それだけであった。

そのまま馬乗りになり殴り続ける忠雄。だが、その時

「!、グアッ!!」

何者かが忠雄の腕を掴み、そのまま関節を逆に捻りながら頭を床に押さえ付けた。

「は、離せ!私を誰だと思っている!!」

「自分こそ何をしているのか解っているんですかっ!!」

それは、先程、野々山宅に巡回に訪れた警察官の一人であった。

もう一人の警官が倒れている【少年A】の顔を覗き込む。

「救急車を手配します!」

「頼む!」

家の外へと走り出る警官。そして

「暴行罪の現行犯で逮捕します」

忠雄は自身を押さえ付けている警官に手錠をかけられた。

つづく

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