左肩と首の辺りに手を添え苦痛に苦しむ表情の【少年A】は立ち上がると同時に脱兎の如く部屋を飛び出そうとした。
「待てっ!!」
咄嗟に飛び掛かる忠雄。
肩を捕まれた【少年A】は振り向き様に忠雄を右の拳で殴る。
「ぐっ!」
反射的に左腕でガードすると忠雄は右掌で【少年A】の頬を力任せに叩いた。
バコッ!
廊下の階段手摺によろける【少年A】
その胸倉を掴む忠雄。
「貴様かっ!貴様がやったのかっ!!」
興奮状態で何度も【少年A】の身体を揺さぶる。だが
「うぉっ!」
今度は突き飛ばされ尻餅を着く。
走り出し階段を駆け下りようとする【少年A】
それを見て忠雄はヘッドスライディングをする様に【少年A】の足元へと飛び込み、その足首を掴んだ。
「わぁっ!」
バランスを崩した【少年A】が前のめりに倒れる。
バタッ!
倒れた反動で忠雄の手が離されると【少年A】の身体は、そのまま階段を転げ落ちた。
ガッ!ガッ!ガタッ!ガッタッタッタ!バターン!
凄まじい衝撃音が一階廊下に響き渡る。
立ち上がり階段を駆け下りる忠雄。
倒れたままの【少年A】の胸倉を再び掴む。
「よくも…よくも大事な娘をーっ!!」
忠雄は力任せに【少年A】の顔を拳で殴りつけた。
ガッ!!
最早、正気では無かった。今の忠雄の精神状態、それは、ただただ愛する娘を凌辱された事に対する復讐心、それだけであった。
そのまま馬乗りになり殴り続ける忠雄。だが、その時
「!、グアッ!!」
何者かが忠雄の腕を掴み、そのまま関節を逆に捻りながら頭を床に押さえ付けた。
「は、離せ!私を誰だと思っている!!」
「自分こそ何をしているのか解っているんですかっ!!」
それは、先程、野々山宅に巡回に訪れた警察官の一人であった。
もう一人の警官が倒れている【少年A】の顔を覗き込む。
「救急車を手配します!」
「頼む!」
家の外へと走り出る警官。そして
「暴行罪の現行犯で逮捕します」
忠雄は自身を押さえ付けている警官に手錠をかけられた。
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