初っ端から物凄い盛り上がりの会場。
嵐の様な歓声の中、マイクスタンドを片手に握り締めた裕司が客席全体をゆっくりと見渡す。
《裕クン……………カッコいい
》
本物のロック・スターの様な風格を漂わせてる裕司に麻理子は、ついつい見惚れてしまう。
歓声が落ち着いてきた頃合に裕司が後を振り返りキーボードの方を指々す。
加奈子がピアノで小気味よいリフを刻むとオーディエンスも、それに合わせて手拍子を叩く。
ここで麻理子は、やっと本来の目的を思い出し澄子の方に顔を向けた。
その澄子は暫し呆然としていた。
身動き一つせず只々、ステージを真っ直ぐ見詰めている。
だがその表情は明るい笑顔でYASHIMAのパフォーマンスに完全に引き込まれている様であった。
「ね~ら~あってるぅ~♪」
そして裕司が歌いだすと澄子も何と周囲に合わせて手拍子を叩き始める。
その、本当に楽しそうな様子を見て安心すると同時に嬉しくなる。
「良かったわね」
真純が小声で囁き、それに麻理子も笑顔で大きく頷く。
そして始めは澄子の一つ奥の席で大人しくしていた千晶が我慢出来なくなったのか立ち上がって踊り始め「セクシー・キャット!」の部分では両手で猫耳を型取りピョンと飛び跳ねた。
そんな千晶の可愛らしい弾けっぷりを微笑ましく思いつつ麻理子達もYASHIMAの演奏を楽しむ。
その一方で
「何だ兄貴、随分と楽しんでるなぁ」
YASHIMAのパフォーマンスを目の当たりにして無意識の内に足でリズムを取っていた徹に護が茶々を入れる。
「び、貧乏ゆすりだっ!」
誤魔化す様に足を組み替えて深く椅子に座り直す徹。
「ふ~ん」
だが、そういう護も実は徹とは反対側の指でシートの手摺りを知らず知らずに曲に合わせてトントンと叩いていた。
そして何気なく視線を澄子の方に向ける。
すると手前で唄の様に下着が見えそうな程ヒラヒラと舞っている千晶のミニスカートが視界に入ってしまい目のやり場に困った。
やがて曲がピアノ・ソロのパートに入ると加奈子が見事な超絶技巧を披露。
小柄な身体をワイルドかつダイナミックに躍動させ、その小動物の様な容姿からは想像も出来ない程にアグレッシヴなサウンドを叩き出す。
「凄い!凄いわ加奈子さん!!」
加奈子の演奏に驚嘆する澄子。
澄子だけで無く1階席のYAZAWAファンも加奈子のピアノに脱帽してしまい、また最初はYASHIMAと永ちゃんファンを色眼鏡で観ていた吉岡清純目当ての観客も徐々に徐々にと、そのパフォーマンスと会場の雰囲気に引き込まれていき、今日この日YASHIMAは宣言通りYAZAWA魂を爆発させ、その勇姿を観衆の記憶に深く刻み込むのであった。


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