これは矢沢永吉の唄を愛した貴女達の物語である。
第壱章:洗礼
2003年12月21日 日曜日 東京 九段下 5:10PM
北風が木葉を散らし街を冷たく染め始める季節。
だが毎年この時期になると、このエリアだけは、ある独特の熱気に包まれる。
「わぁ…..」
山本麻理子はその熱気を帯びた人々の数と醸し出される雰囲気に圧倒されていた。
「ほらほら、ボォーーーッとしない!」
槙村遥子に腕を取られ我に返る。
「う、うん…」
「ホント変わらないね」
苦笑いを浮かべる遥子に引っ張られ、散歩に連れて行かれる子犬の様に引き摺られる。
「姉ちゃんチケット余ってない?」
「余ってたら買うよ」
「無い人あるよ。アリーナあるよ」
薄暗い歩道から北の丸公園の入り口を左に曲がると次々とダフ屋が声を掛けてきた。
「ハイハイまた今度ヨロシクねぇーっ」
遥子はそのダフ屋の集団を適当にあしらって歩を進める。
《ホント変わらないね》
さっきの遥子の言葉が引き金になったのか麻理子は、この瞬間ふと遥子と初めて出逢った時の事を思い出していた。
何も見えない位に真っ暗な田安門をくぐり抜けるとライトの灯りで急に辺りが明るくなる。
左に流れる緩やかなカーブを進むと左手に白い屋根のテントが見えた。
コンサートグッズの販売所であるそのテントには様々なデザインのタオルやTシャツ等が飾られテント前は大勢の客でごった返しており、また、白いパイプフェンスを隔ててグッズを買い終えた者、売り場に入りきれない者、フェンス越に遠目でグッズを物色してる者達が車道の方にまで溢れ出ている。
「こちらで立ち止まらないでくださーい」
「お買い物が済みました方は速やかに移動してくださーい」
「車道に、はみ出さないでくださーい」
「歩道を、お歩きくださーい。車道を歩きますと大変危険でーす」
警備員達が注意を呼びかけてるが殆ど意味を成していない。
遥子と麻理子は溢れかえる左の歩道を避け右側の歩道に渡った。
ふと麻理子は視線を左に向ける。
ライトに照らされている大きな横断幕が目に入った。
『矢沢永吉 Concert tour 2003 Rock Opera 日本武道館』
高校時代からの親友である槙村遥子に誘われて来てはみたものの、場違いな所に来てしまったと思っていた。
だが、この日、この時が麻理子にとって大きな人生の転換期になるとは麻理子自身、夢にも思っていなかった。
注:この話はフィクションです。
コメント
ノンフィクションかと思った
早速次回はいつ頃更新なの?
うんうん、ボクもノンフィクションかと思った。
次回、楽しみにしてます(^^)
なんか読んでると、ドキドキしちゃいます♪
続きが楽しみ~☆
バーテルさん♪^^
一応、032までは書き上げておりまして
週に1~2回ペースを目標にしてますんで
今後もヨロシクお願いします
ターボーさん♪^^
リアルに感じるフィクションを目指してますんで
ノンフィクションに思って頂けましたら嬉しいです
またヨロシクお願いします
chinatownさん♪^^
ありがとうございます
退屈させない展開を目指してますんで
次回もヨロシクお願いします
ちょ~ど良いところで《続く》なんですね~
続きが早く読みたいです
ぺこちゃん♪^^
あんまり長く掲載すると読む方も疲れると思いましてね
出来るだけ早いペースで進めたいと思いますんで
またヨロシクお願いします