改めて開業した法律事務所を細々と営み、野々山に対する世間の関心も薄れてきた頃、ある事件が起きた。
【女子大生強姦殺人事件】
都内の大学に通う二十歳の女子が一人の男に強姦された末に殺害された。
しかも犯行が当時、中学二年生の【少年】による物という事実に社会は驚愕。
いわゆる【少年法】に関する議論が再加熱する中、マスコミが犯人の人物像、家庭環境等を面白可笑しく書き立て、そんな中、何と加害少年が、野々山に弁護を依頼してきた事により、この事件は益々、世間からの注目を集める事となった。
この件が報道された途端に野々山の事務所には抗議の電話やメールが殺到。
何の回答も出していないというのに理不尽な批判を浴びせられる中、野々山は結局、この依頼を受託。
かくして倍率100倍以上の傍聴希望者が殺到した初公判が開かれると、世論の予想に反して裁判は被告人サイドに有利な展開へと流れだした。
実は被害女性は普段から素行に問題が有った様で、ご近所や学校等、周囲の評判が、すこぶる悪かったのだ。
小学校の頃から髪を染め、服装も派手。極度の目立ちたがり屋の、いわゆる女王様タイプで些細な点でも気に入らない事があればクラスメイトや周囲の者達に八つ当たりをし、教師にさえも噛みついていた。
また、加害少年とは家も近く幼少時代から顔見知りであったが、何故か、この少年を毛嫌いしており、よく「ブサイク!」「キモい!」等、事ある事に面と向かっては悪口を浴びせていたのだった。
またある時、近所で下着泥棒による被害が相次ぐと「白状しなさいよ!アンタが犯人なんでしょ!」と何の証拠も無い中、名指しで疑われ、数日後に真犯人が捕まり、疑いが晴れても女から謝罪の言葉が聞かれる事は無かった。
その様な性格故に、敵も多く、被害者を知る人物は口々に「あの女はロクな死に方をしないと思ってた」「犯人を庇う気は無いけど身から出た錆かもね」「○○(←加害者の本名)がやらなくても、いずれは誰かに殺されてたろうよ」と同情する者は皆無であった。
野々山は、この事実を最大限に利用。犯行は被害者の日頃の行いが招いた不幸な事故の様な物だと裁判員や傍聴者に印象付けようとした。
対して検察は、犯行が計画的であった事実を強調。
一人暮らしであった被害女性の環境、生活パターン等、入念に下調べを行い、パソコン・オタクでIT関連に詳しい故の知識を悪用して女性宅マンションのセキュリティを突破。
個人的な恨みを晴らすという身勝手な動機で住居に忍び込み凌辱、殺害に及んだ事実に弁解の余地は無いと訴える。
だが、そこで野々山は、被告が自首した事実を指摘。
【少年】は犯行後、自ら携帯電話で警察に連絡を入れ、現場検証、取り調べにも協力的で、何より今は心の底から反省し、遺族にも謝罪したい気持ちが有る事を力説。
結果、更生の余地は充分と判断され【少年A】は少年刑務所では無く、3年間の少年院送致が決定。
事件とは別に【新・日本国憲法】が施行される中、この事件は一応、決着となったが、これが野々山家の悲劇の序章となったのだった。
コメント
なるほど、こんな展開になって行くのかぁ。
引き続き楽しみにしてまっせ
大阪の永ちゃん狂い♪さん♪^^毎度です
女トラより筆の進みが極端に遅いのですが、どうか気長にお待ち頂けます様、今後もヨロシクお願い致します
>世論の予想に反して裁判は被告人サイドに有利な展開へと流れだした。⇒①
>事件とは別に【新・日本国憲法】が施行される中⇒②
なるほど、①の要素を導入することによって筆が進まなくなったのですね!?
しかも、本題の②が絡んでくるといきおい物語が複雑にならざるを得ません。
とにかく楽しみにしていますよ
Harmonia Mundiさん♪^^毎度です
いやぁ~、ただ単にリアルが忙しかったのと、上手い文章が全く思い付かなくて筆を止めてただけなんですが(笑)
何せ他にやりたい事や、書きたい小説ネタが次から次へと浮かんでくるもんで今後、更にペースが遅くなるかもしれませんが、どうか御容赦願います
これが、野々山家の悲劇の序章
次回が怖くて、でも読みたい
楽しみにお待ちしていますm(_ _)m
ぺこちゃんさん♪^^毎度です
まぁ映画や漫画じゃ無いから視覚的な表現は、やりたくても出来ないので気楽に読んで下さいまし(笑)