ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆003

3人の男が近づいてきた。

「こんばんは~!」
「ごめんね。わざわざこっちに来てもらっちゃって」
「そんなのいいって」
「あんだけ人がいたら判り難いもんなぁ」
「毎年の事だけどな」
「来年からはこっちで待ち合わせするか?」
「あぁ。売店の前や時計台の真下よりはいいかもな」

挨拶代わりの雑談が遥子と3人の男達で交わされる。

麻理子は、ちょっと安心した。
男達が外見上は遥子の言う通り『普通』だったからだ。

会話が一段落した所で遥子が

「紹介するわ。高校時代の親友なの」
「は、初めまして!山本麻理子です」

いきなり振られたもんで慌てながらお辞儀をする麻理子。

「おぉ~可愛い~~!」

異口同音に色めき立つ男達。麻理子の顔が少し赤くなる。

「松岡敏広です」
「矢野賢治です」
「汐崎裕司です」

3人とも麻理子達と同い年の25歳であった。

「私の楽しい矢沢仲間よ」

3人の自己紹介に遥子が付け加える。

「遥子ちゃん。そこは楽しいじゃなくてカッコいいとか素敵だろうよ」と敏広。

「あ~ら、ごめんなさい。でも私は嘘がつけないの」

二人のやり取りに一同が笑う。

「所で、それじゃあ裕司は今日このカワイ子ちゃんとツーショットで観れるって事か?」

敏広のその言葉に麻理子は戸惑いの表情を浮かべた。

「それは無理よ。連れてきた私が麻理子をほっとく訳にはいかないもの」

「そりゃそうだよな」と賢治。

それを聞いて麻理子は内心ホッとする。

「それじゃどうするんだ?」
「裕司君のチケットを私のと交換して欲しいの。こうゆう言い方は語弊があるけど私のチケットの方が良い席だから納得して」

遥子のチケットは1階の南東の4列目。裕司のは2階席であった。

「俺は構わないけど」

「って事は?」
「敏広君は私のチケットで裕司君と一緒に観て」
「何だよ~~~!また遥子ちゃんとのツーショットお預けかよ~~~!」
「敏広ザーンネーン!」と賢治が笑う。

「賢治君は今日は加奈子さんと?」と遥子。
「そう」

言いながら親指を立てて武道館の方を指す。先に入場してるという意味だ。

賢治は毎年、武道館最終日だけは必ず幼馴染で嫁の加奈子と一緒に観ると決めている。

「敏広君も賢治君を見習いなよ」
「何だよそれ」
「彼はいつも違う女の子をコンサートに連れてくるの」と遥子が麻理子に話す。
「おいオイ!誤解を招く言い方はやめてくれ!」
「お前それはホントの事だろ」と裕司。
「毎度日替わりだもんな」と賢治がニヤニヤしながら続く。

毎度日替わりはオーバーだが敏広にガールフレンドが多いのは事実である。

「それはそうと神崎さんの調子はどう?」と遥子が裕司に聞く。
「年内には退院出来るらしい」
「よかった」
「あーそうそう!遥子ちゃんが真っ先に見舞いに来てくれたって喜んでたよ。奥さんもお礼を伝えて欲しいって言ってた」
「奥様にもご挨拶したかったんだけどねぇ。調度、席を外してらっしゃったみたいだから」

裕司の元上司の神崎雄一郎が自宅から救急車に運ばれたのが約2週間前。

そのまま入院という事になり今回の武道館参戦を断念。

一緒に観る予定だった裕司がチケットを受け取り、空いてしまった神崎の席を遥子が譲ってもらい麻理子を誘ったという訳である。

「それにしてもツイてないよなぁ」
「あんなにやっと最終日のチケット確保出来たって喜んでたのにね」

裕司の持ってるチケットは元々は神崎が慣れない携帯電話を使って携帯サイトで手に入れた物であった。

毎年、武道館最終日のチケットは争奪戦になるが、この年の最終公演は日曜日であった為に更に競争率が増し敏広や裕司の様に自分でチケットを確保出来ないファンが続出。

そんな中での神崎の携帯サイト当選は、かなり幸運な事であった。

「それじゃ、そろそろ行きましょうか」と遥子。
「そうだね」と裕司。

遥子と裕司がお互いのチケットを交換する。

「最終日、盛り上がっていこうぜっ!!」

敏広が叫ぶと男達は手に持っていたビーチタオルを勢い良くバッと広げ肩に掛けた。
3人とも見事に息がピッタリなので目が点になる麻理子。

「遥子ちゃん、今日の打ち上げは?」と敏広。
何だかさっきと顔付が変わってる。声のトーンも低い。

「欠席するわ。麻理子を家まで送らなきゃならないから。情事さんには伝えてある」
「そっか残念!また来年ヨロシク!」
「うん」
「麻理子ちゃんもまたね!」
「あ、ハイ」
「楽しんでってくださいヨロシクゥ!」
「それじゃ!」

そう言い残し3人はタオルを掛けた肩で風を切る様に武道館へと向かっていった。
ただただ呆気にとられる麻理子。遥子はクスクス笑っている。

「私達も行きましょ」
「う、うん」

3人から少し遅れて武道館に向かう遥子達。

武道館に近づくと

「タオルを肩にかけての、ご入場は出来ません。手に持って、ご入場してください」

とのアナウンスが聞こえてきた。

たまたま麻理子の視界に、さっきの3人の背中が映る。

さっきまで威風堂々と歩いていた3人が肩にかけてたタオルを、そそくさと外すのが見えた。

その姿に彼等のリアルな人柄が現れている様に思えて麻理子は今日、武道館に来て初めてクスリと笑った。


つづく


次回、当方がリアルに武道館参戦なもんで休載します

コメント

  1. 大阪の永ちゃん狂い より:

    こんにちわ、自分は武道館初日に行って来ました
    最終日に参戦出来るなんて、羨ましい~
    思う存分楽しんで来てください
    でも☆女達のトラベリン・バス☆の続きが気になって・・・
    楽しみにしとりますんで、よろしゅうに

  2. AKIRA携帯 より:

    大阪の永ちゃん狂いさん♪^^
    嬉しいコメントありがとうございます♪^^
    すみません明日まで帰れないので帰ったら、ちゃんとレスしますんでヨロシクお願いしますm(__)m

  3. AKIRA より:

    大阪の永ちゃん狂いさん♪^^
    武道館初日に参戦お疲れ様でした
    自分も昨日は存分に楽しんで
    最高に美味いビール飲んできました
    >続きが気になって・・
    嬉しいお言葉、本当にありがとうございます
    武道館レポを書き終え次第、再開しますので
    こちらこそ今後もヨロシクお願いします

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