ネット小説 web小説【人権剥奪】003

「まぁ、至ってシンプルな考えでして、人権侵害を犯した者に対しては、その人権を剥奪しようと。その様な者に人権を主張する権利は無いと、こういう事ですね」

「具体的には、どの様な場合に人権を剥奪されるのでしょうか?」

「先ず殺人ですね。今回のケースもそうですが。まぁ後は強盗、強姦といった凶悪犯罪等でも裁判によっては剥奪される事になるでしょう。それから常習犯。いわゆるスリー・ストライク制が導入されましたので3度目の有罪が確定したら自動的に剥奪という事に成ります」

「では、人権が剥奪されるとは、具体的に、どの様な事になるのでしょうか?」

「簡単に言えば人としての権利が無くなるという事です。憲法で定められてる生存権、平等権、自由権、社会権、請求権、参政権また環境権等、諸々の権利が認められなくなります」

「人間、ヒトでは無くなるという印象を受けますが」

「有体に言えばそういう事に成りますね。例えは悪いですが昔の【非人】の様なモノと思えば解り易いかと」

「それに関しては差別だ!という意見も以前から多々、あるのですが」

「ですが、その差別を自ら招いている訳ですからなぁ。嫌なら、その様な犯罪を起こさなければ、いいだけのは無しなんで」

「では、現行の憲法が施行されて約2年が経過しまして、いずれは、こう言った被人権剥奪者が刑務所から出所する日も来る訳ですが、もし、そう成った場合、出所した者の社会復帰は難しい、否、ほぼ絶望的とも思えるのですが」

「まぁ、それも自業自得と私は思いますがねぇ」

「出所したらホームレスにでもなれと?」

「いえ。マルハク(*02)……おっと失礼!被人権剥奪者専用の収容施設の準備が現在進められています」

「それは、どういった物なのでしょうか?」

「解り易く言いますと塀の無い刑務所ってトコでしょうかねぇ。違いは施設が提供する仕事で働けば給料も貰える。安いですけどね。一応、外出も出来ます。後は刑務所と変わりません」

「一生、刑務所の様な生活を続ける事に成りますね」

「まぁ、それが嫌ならホームレスに。何より繰り返しに成りますが剥奪される様な真似をしない事ですね」

「外出も可能との事ですが、そのまま逃亡という可能性も有るのでは?」

「その心配は無用です。被剥奪者にはナノ・センサー(*03)が強制的に埋め込まれますので何処に逃げても居場所は直ぐに突き止める事が出来ます」

「では出所した被剥奪者が再犯、再び犯罪を起した場合はどうなりますか?」

「死刑です」

「死刑、ですか?」

「はい。証拠が揃った時点で死刑と成ります。その際、罪の重さ軽さは問われません。万引き、痴漢といった軽犯罪でもです。裁判も行われません」

「非常に厳しいとも思われるのですが」

「元々この人権剥奪とゆう発想は、いわゆる人権派の「死刑は人権侵害だぁーっ!」とゆう意見に対して「ならば、そんな奴等の人権なんて剥奪しろ!」という国民多数の声を反映した物でして、何度も言いますけど、そうなったとしても元はと言えば自分のせい。真面目に人生やってたら、こうゆう目に遭う事も無いんでねぇ」


つづく


*02.マルハク/被人権剥奪者の隠語。

*03.ナノ・センサー/超小型の発信機。因みにナノは10億分の1の単位。

コメント

  1. らきあ より:

    ご無沙汰しております
    いつも、楽しくよませていただいてます
    いやー、イイですね。物語の世界にグイグイ引き込まれます
    近未来社会派サスペンス
    日本が歩いてきた道  男達の過去、そして未来
    絡みあう人間模様
    今後の展開、楽しみにしております。
    普通に買ってきた本なら缶ビール片手に一気読みです。

  2. 新堂日章 より:

    らきあさん♪^^毎度です
    先ず、Amazonレビュー書き込み真にありがとうございました
    本作品も楽しんで頂けてる様で恐れ入ります
    ただ、現在、非常に創作の進み具合が悪い物で更新が遅れがちに成ると思いますが、どうか気長にチェックして頂けたら有難いので今後もヨロシクお願い致します

  3. 大阪の永ちゃん狂い♪ より:

    まいど、ご無沙汰です。
    新作始まりましたね、待っとりました♪
    「人権剥奪」「国民裁判」「マルハグ」「ナノセンサ-」
    この先どんな展開になるのか、楽しみです。

  4. 新堂日章 より:

    大阪の永ちゃん狂い♪さん♪^^毎度です
    【20XX年】シリーズは【人権剥奪】以外にも構想が幾つか有りまして生きてる間に全部、書き切れるか不安ですが(笑)乞うご期待って事で今後もヨロシクお願い致します

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