Open Your Heartの店内はフロア部分だけでも20畳位と中々広く入って左側の面には様々な年代の矢沢永吉のポスターが、入り口に面した壁には異なったロゴデザインのビーチタオルが特注の額に入れられて飾ってあり、その殆どが眞由美のコレクションだが、たまに常連客や昔からの仲間がプレゼントしてくれた物もある。
大きめで縦長の黒いソファが壁際に、コの字に並び長方形のテーブルが5つと向い側に丸ソファが格テーブルに4つずつ、右手にカウンターと止まり木が10基、広い間隔で配置されている。
バーとゆうよりスナックに近い雰囲気であるが自分の店で素人の下手な歌なんて聴きたくないとゆう眞由美の意向で矢沢ファンの経営するお店では珍しくカラオケが無かった。
店名は3rdアルバム『ドアを開けろ』から取った物でBGMは勿論YAZAWAオンリーである。
程よい音量で永ちゃんの歌が流れる中で参加者達が熱く矢沢を語りだす。
特に眞由美や真純、そして真純の友人達はファン歴が長い事もあって、その思い入れは敏広や遥子達の様な若い世代よりも遥かに熱く深い。
だが敏広と賢治も負けてはいない。
キャリアは真純達に遠く及ばないが矢沢のステージに心の底から感動したファンの一人として遠慮無く持論を展開する。
横で話を聞きながら麻理子は意外に思っていた。
みんな言いたい放題だからだ。
最初に抱いていたイメージでは矢沢ファンは皆、永ちゃんを賞賛するだけで悪く言う人など皆無だと思っていたのだが少なくとも、ここにいる人達はズケズケとはっきり物を言う。
一例で過去のライヴの話題等では
「あの時のあの演出はナイよねぇ」
「あれは金の無駄だよ」
「あの時のMCも無駄に長かったね」
「うん。面白くもなかったし」
「最後は何だか意味不明になってたもんね」
「無理に話なんかしないで早く歌えばいいのに」
「またあの曲、演ってたけど、いい加減飽きたよ」
「他に良い曲いっぱいあるのに、あの選曲はセンス疑う」
とまぁボロクソである。
後に「ファンは勝手な事を言うからねぇ」とゆう矢沢永吉本人の言葉を耳にした時、麻理子はこの日の事を思い出す。
だが勿論ダメ出しばかりではない。
「去年あの曲、演ってくれたのは嬉しかった!」
「あれは痺れたね!」
「あの曲も良かったよ」
「あの頃を思い出したわ!」
「あの曲、CDでは良いと思わなかったのにライヴで聴くと凄くいいね!」
「YAZAWAマジックだよね」
「永ちゃんって首筋の辺りがホントSEXYなのよねぇ!」
「確かに男の人であんなに色気のある人って居ないわよね」
「横顔もカッコいい!」
「歌声も色気がありますよ」
「未だに原曲キーで歌えるのは凄いね」
横で聞いていて率直に感じたのは、ここにいる人達は、みんな正直で、そして本当に矢沢永吉が大好きなのだとゆう事。
それから時に意見が分かれる事もあるが持論を他者に押し付ける様な事はせず特にベテラン勢が年齢やファン歴に拘らず敏広達若手の話に、ちゃんと耳を傾ける所に懐の深さも感じた。
また、こうゆう席では新参者は会話に参加出来ず孤立してしまう事が多いのだが遥子が一緒だった事もあるが皆が麻理子に気配りをしてくれるので淋しい想いをする事も無く、むしろ、まだファンではない麻理子でも楽しく話に参加する事が出来た。
「麻理子ちゃんはどう?楽しかった?」
「はい!」
「どの曲が良いと思った?」
「タイトル分らないんですけど。。。あの女性コーラスの人とのデュエットが素敵でした」
「SUGAR DADDYね」
「あれはホント良かったねぇ~!」
「俺、正直あの曲、存在自体を忘れてましたよ」
「実は私も」
「他には?」
「口笛を吹いてた。。。ギターを持ってアリーナの中央で歌ってた曲は何だか聴き憶えがある様に思いました」
「YES MY LOVEね」
「あれ私の思い出の曲なのよねぇ~」
「なら今、俺が歌って差し上げましょう」
「思い出が汚れるから止めて」
盛り上がってる最中にも一人また一人と参加者が訪れ気が付けば店内には20人もの熱い矢沢ファンが酒と熱意を酌み交わしていた。
メンバーの中には敏広や賢治達も初対面の者もいたがグラスを合わせたらそんな事など関係なく、みんな昔からの友達の様に語らい始める。
普通ではこんな光景は考えられない事である。
そしてそれを可能にしているのがYAZAWAとゆうキーワードである事実。
麻理子は『矢沢永吉』とゆう人物に改めて興味を抱いた。
コメント
「ウンウンそうなんだよね~」なんて頷きながら読んでます
みんな「永ちゃんが大好き」それが根底に有るんですよね
ぺこちゃん♪^^毎度です
我々もそうですが好きだから勝手、言える訳でして
それを今回、表現してみました
またヨロシクです