「いい人達ですね」
「えぇ!本当に」
帰っていく裕司達を玄関先で見送る護と澄子。
共に裕司以外の者達と顔を合わせたのは雄一郎の葬儀以来2度目。
あの時は裕司達だけで無く多くのYAZAWAファンが弔問に訪れ、その独特な雰囲気に当初は些か面食らったがTPOをわきまえたマナーに澄子や周囲に対するさり気ない気遣い等を見て護は雄一郎の知人達の事を感心していた。
そして、この日も裕司達がいかに雄一郎を想い澄子の事を気に掛けているのかを垣間見る事が出来たのだった。
「いやぁ~美味かったなぁ~!」
「明日からダイエットしないとぉ」
雄一郎の遺影に手を合わせて直ぐに退散するつもりの裕司達であったが折角来てくれたのにそれでは申し訳ないとその後、澄子が手料理を振舞ってくれた。
有り合わせの材料で作られた質素な物であったが味はどれも絶品で、さながらホームパーティーの様になった雄一郎の四十九日。
だが、その方が主人も喜んでくれると澄子も笑っていた。
「しっかし神崎さんって結構デカい家に住んでたんだなぁ」
「豪邸と言ってもいい位だったな」
「神崎さんが悠々自適の老後だって言ってたのが判るわね」
「奥さんの財テクのお陰だって。ただ金が無いのは惨めだけど有り過ぎるのも困ったもんだとも言ってたな」
「…………成程。そういう事か」と拳斗。
「えっ?どうしたの?」と眞由美が聞く。
「いやチョットな。なぁ裕司、これからは出来るだけ時間を作って神崎さん宅に出向いてやってくれないか?」
「あぁ、はい」
「俺達もあちらのご迷惑にならない程度に顔を出した方がいいと思う」
「異論は無いけど何でまた?」
「神崎さん、何かトラブルを抱えている様だったろう?」
「うん」
「確かに」
「恐らく財産絡みだ。厄介事を未然に防ぐ為にも人の目は多い方がいい」
「空き巣とか強盗対策って事?」
「それも有るが一番は恐らく相続関係だろう」
「でも神崎さんって子供、居ないでしょ?親族もいらっしゃらない様だし……」
「そういえば一時期ボヤいてました!やたら養子縁組を迫ってくる奴等が家に来て迷惑してると!」
「あぁ~そういう事!」
「こういう事はよく有る話でな。金の匂いに敏感な奴はタチが悪い。最悪の事態を避ける為にも具体的な行動が不可欠だ」
「最悪って?」
「奥さんの生命が危険に晒されるって事だ」
「ちょっと!縁起でもない事…」
「だがそれが現実なんだ。神崎さん亡き後、俺達が奥さんを守る義務がある。それが大切な仲間への手向けになると思わないか?」
誰もが拳斗の言葉に納得、同意した。
「なら今回は私が人肌脱ごうかしらね」と真純。
「あぁ~っ!アンタが一番適任かもね!」
「スミなら頼もしいな!」
「遥子ちゃんじゃないけどウチの旦那も海外行ったり来たりだからねぇ。時間ならたっぷり有るわ」
「済まないな。場合によってはウチのスタッフも派遣するから宜しく頼む」
「そんなのいいわよ!拳ちゃんトコも忙しいんでしょ?暇な専業主婦何人も知ってるから、そいつ等使うわ」
「何だか昔を思い出すわねぇ」と眞由美。
「何スか?昔って」
「知らん方がいい」
敏広の問いに苦笑する拳斗であった。
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