ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆077

「あの・・・今日は本当にありがとうございました!」
コンサート終了後にお礼を述べる敏広達3人。
「礼なら永ちゃんに言えって」
「いや!でも今日は皆さんのお陰で楽しむ事が出来たって言うか・・・」
「確かにお前等、凄い楽しんでたなぁ!」と笑うお兄さん方。
恥ずかしそうに沈黙する3人に更に笑いが起こる。


そのままスタンドから一緒に通路に出てくる敏広達。
「所でお前等、どっから来たんだ?」
「溝の口です。皆さんは?」
「岡山」
「俺達は熊本」
「俺達は福井」
「こっちは札幌」
「ええっ!?」
今では全く驚かないが、この頃の敏広達には、地方から関東方面のコンサートに参戦、或いはその逆などは考えられない事であった。
「それじゃ、これから地元まで帰るんですか?」
「まさか!泊りだよ泊り」
「これから打ち上げに行くからよ」
「ある意味こっちの方が本番だよな」と笑う。


その時
「おいボウヤどうした?」
一人の男の子が通路で泣いているのに気付くお兄さん方。どうやら迷子の様だ。
「○○ちゃんのお父さんお母さーん!」
「○○ちゃんのパパママ何処だぁーっ!?」
迷子の手を取り親御さんを探し出す白スーツのお兄さん方。
すると足早にこちらに向ってくる見た目、普通の男女が一組。
「すみません!すみません!」
「おぉ~居た居た!」
廻りから安堵の吐息と僅かな拍手が起こる。
母親が駆け寄ると安心したのか大泣きしてしまった男の子。
「駄目だよ子供から目を離したら!」
「はいすみません!」
「よかったなぁ~ボウヤ!」
そして何事も無かった様にその場から立ち去るお兄さん方を見て敏広達は感動した。
《何てスマートなんだ!》


そのまま横浜公園まで一緒に出てくると
「お前達は関内か?」
「あ、はい」
「俺達はこっちだ」と中華街、別のグループは伊勢崎町の方を指す。
「あ、それじゃ今日はお世話になりました」と改めて礼を言う3人。
「じゃあな高校生」
「気をつけて帰れよ」
「また何処かで会おうぜ」
「いつか一緒に最高に美味いビール飲もう」
「これからもYAZAWA魂を忘れるなよ」
『YAZAWA魂』、正直よく意味は判らないが、この言葉に敏広達3人はググッと来た。
颯爽とその場から去ってゆく白スーツのYAZAWAファン達。

「カッコいい~い

その背中を敏広達は、まるで女子高生の様な眼差しで見詰め溜息をついた。

つづく

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