『眞由美は永ちゃんに女にして貰った』
聞き様によっては誤解を招く言回しだが少なくとも朝倉家の人々は皆、本気でそう思っていた。
以来、眞由美は短かった髪を伸ばし始め自分から女の子らしく振舞う努力をし、その成果は家族が驚く程、日に日に現れ中学に入学する頃には男らしさは完全に消え失せ、すっかりセーラー服の似合う女の子に変貌していた。
これには朝倉家の人々もホッと安心してたのだが唯一変わらなかったのがケンカ。
回数こそ減ってきたものの、その規模は反比例して年を追う事に拡大して行き2年の時には戸塚区全域、3年の時には横浜市内、そして高校に入学する頃には神奈川県下で眞由美を知らぬ者は居ない程の有名人になってしまい美人だが睨みを効かせるその視線が凍り付く程に怖ろしい事から付いたあだ名が『ハマのメドゥーサ』
実は眞由美は当初このあだ名が気に入っていた。
メドゥーサの響きが何となくカッコよく感じたからだ。
しかし、そのメドゥーサが何であるかを知った途端に大激怒。
それから眞由美の前でこの句を口にした者は地獄を見る事になるのであった。
また後に起こるある事件がきっかけで眞由美のメドゥーサ伝説は更に拍車が掛かり、それがまた眞由美の怒りの炎に油を注ぐ事になった。
―――そのある事件―――
眞由美が高校1年生だった頃のある夏休みの夜。
眞由美を快く思っていない他校の女子生徒の策略で危うくレイプされかけた事があった。
とある学校の体育館倉庫に呼ばれ全く面識の無い男子6人に囲まれてしまった眞由美。
倉庫の外には、そいつ等の舎弟である中学生5人が見張りに就いていた。
4人までなら倒す自信があるのだが流石に分が悪いと判断した眞由美は奇策に打って出る。
「判ったわよ。そんなにしたいならヤラせてあげるから乱暴しないで。ね♡」
自ら服を脱ぎだす眞由美。
「おぉ、物分かりいいじゃねぇか」
元々、眞由美に対して怨みは無く、その女子生徒に唆されただけの男達はこれで完全に油断した。
下着だけになった眞由美が男達のベルトを外しファスナーを下ろす。
「おぉ~随分と積極的だな」
「私にだって楽しむ権利はあるでしょ」
「へへへ、この淫乱めが!」
その頃、外で見張りをしていた中坊達はジャンケンをしていた。
もしかしたら、お零れに与れるかもしれないと期待して、その順番を決めていたのだ。
中々決着が着かず何度目かのジャンケンをしだした頃
「ぎゃぁーーーーーーーーーっ!!」
複数の物凄い悲鳴が倉庫内から聞こえてきた。
一体何が起きてるのかと恐る恐る扉を開け中の様子を伺う見張り達。
中では尻を丸出しで股間を両手で押さえながら倒れて、のた打ち回っている男6人が。
眞由美はすべての男の下半身を露出させると醜くそそり立ったイチモツを片っ端から圧し折ったのだった。
膝まで下ろされたズボンのせいで足の自由を奪われた男達は成す術無く眞由美の手痛い攻めを味わい昇天した。
呆然とする見張り達。
デニムのジッパーを上げ不敵な笑みを浮べながら眞由美が出口に向ってくる。
「お前達も教えてあげようか?」
だがその笑みは正に氷の微笑であった。
中の地獄絵図とその非情な眼差しに縮み上がる小僧達。
実は、この中に鴨川正一と正二が居たのだった。
正一はこの時、廻りには黙っていたが一人、失禁してしまっていた。
また余談だがこの事件の首謀者である女子生徒は両者からの報復を恐れて翌日、自ら姿を消した。
そしてこの事件は神奈川県下だけで無く近隣の都県の不良連中の間に迄、知れ渡り眞由美に手を出そうとする者は激減。その為、ケンカの回数もめっきり減ったが代わりに以下の様な根も葉もない噂も広まってしまった。
『ハマのメドゥーサは手を出してきた男供のチ○コを喰い千切った』
『ハマのメドゥーサは喧嘩に勝った戦利品としてチ○コをコレクションしてる』
『そのチ○コを常に持ち歩いている』
『メドゥーサの頭は蛇だがハマのメドゥーサの頭はチ○コで出来ている』等々。
中でもコレクション説、持ち歩いてる説は本気にしてる者も多く、その話が耳に入る度に眞由美は「私は阿部定かっ!」と絶叫するのであった。
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