ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆061

永悟の新人戦の日。里香は外回りだったのをいい事に二人に内緒で競技場にこっそり寄り道して観客席でその光景を直に観ていた。


「何だか私も一緒に走りたくなっちゃいました」と嬉しそうな里香。
「駄目よ。二人の邪魔をしたら」
「そうですね。うふふふ」


例の騒動以降、永悟と千晶はそれまでの喧嘩する程仲が良い状態から徐々に良い雰囲気になっているのが里香にも感じられていた。


「もうしたかしら?」と眞由美。
「何をです?」
「セックスよ」
ブッと噴出す里香。
「ま、ま、眞由美さん!あの子達まだ中学生ですよ!」
「あら、いいじゃない。好き合った者同士。まぁまだ若いから避妊はちょっと心配かもね」
「そ、それはまぁ…」
何か歯切れが悪い里香。
「あらぁ?もしかして千晶ちゃんにジェラシーかしら?」
「そ、そんなんじゃありません!」
「あの時も何か様子が変だったものねぇ」と意地悪な笑いを浮べる眞由美。
「あの時?」
「パーティーの時よ。あの時、永悟君と千晶ちゃんが~」
「あ、あれは違います!!」


―――その眞由美のバースデー・パーティーの時の一コマ―――

騒動の後、1時間遅れでパーティーは実行された。
「あの時、母さんが携帯に電話をかけてくれて本当に助かりました」と永悟。
「何がどうなってるのか全く判らない状況で携帯が母さんからの着信で震えたのが判って夢中で繋げました」
「助けを呼ぼうとは思わなかったの?」と麻理子。
「思いました。だけど下手な事をしたら千晶達が危ないと思って」
「なるほどな」と拳斗。
「だから母さんだけが頼りでした。でも眞由美さんや拳斗さん、それにここにいらっしゃる皆さんが駆けつけてくれるとは夢にも思いませんでしたけど」
「本当にありがとうございます」と里香。
「もういいから。みんな無事で何よりだわ」
その時、
バシッ!!
「痛っ!!」

誰かが永悟の頭を思い切り引っ叩いた。
「こらぁ~っ!永悟ぉ~!!」
千晶であった。
その時の千晶を見て皆、絶句した。
「ちょっと誰よ!この子にお酒飲ませたの!?」
怒鳴る眞由美。だが誰も心当りが無い。
ドリンク類が用意されてるテーブルに空になったコーラのペットボトルとウィスキーの瓶が転がっていた。
どうやら自分でウィスキー・コークを作って飲んでしまった様だ。


「お前がアタシの事をちゃんと気に掛けて無いからなぁ~・・・ヒック!」
完全な酔っ払いである。
「アタシはあんなキモイ奴にだなぁ~・・・こんな風にこんな風にされてだなぁ!」
と、自分でTシャツを捲り上げブラまで外そうとする千晶。
「やっ!止めなさい!!」
里香が慌てて止めに入る。
他のパーティー参加者は面白がって皆、傍観している。
因みにこの時、千晶が着ていたTシャツは眞由美が着替えの為に持ってきた物である。


「あんな恥ずかしい思いをしたんだぞぉ~!判ってるのかぁ~!?」
「あぁ。…ごめんな」
「おや?」と周りの大人達。
酔ってる千晶も永悟の意外な返答にちょっと驚いている。
「俺がもっとしっかりしなきゃいけなかったんだ。だから千晶や葵ちゃん、それに皆さんまで巻き込んでしまった。本当にゴメン!!」
永悟は椅子から立ち上がって深く体を折り曲げて千晶に謝罪した。
「にゃははは~。永悟、今日はエライ素直じゃないのよぉ。愛美さんが居るからネコ被ってるのかぁ~?」
「なっ!!」と慌てて体を起こす永悟。
そのリアクションに笑う大人達。
「永悟、珍しくいい子だからご褒美やるぞぉ~」
と言って千晶は永悟の首に両手を廻しジャンプしてダッコちゃんの様にしがみ付いた。
そして一気に永悟の唇に思い切り吸い付く。
「ぶっちゅ~~~~!!」
「オォーーーーーーーッ!!」
中学生のキス・シーンに歓声をあげる大人達。
そのまま押し倒される永悟。
「千晶ちゃん大胆!!」と愛美が笑う。
尚も永悟の唇を吸い続ける千晶。
じたばたと暴れる永悟。だが心成しか本気で抵抗してる様には見えない。
そして、その時、千晶の顔色が急に青くなっていくのが周りから見ても判った。


「ん・・・・ん・・・・・んおおおおおぉぉぉ!!」
「んぐぉおおおおおおおおおお!!」
千晶の胃袋の中にあったウィスキー・コークが一気に永悟の口に噴射されてしまった。


悲鳴と笑い声が入り混じる中、里香は自己嫌悪に陥っていた。
千晶の醜態が昔の自分と酷似していたからだ。

つづく

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