何だかさっきと違い神妙な面持ちの里香。
「あの・・・」
「どうしたの?」
「お二人には改めて、ちゃんと御礼を言わなきゃと思ってて・・・」
再び互いの顔を見合わせる眞由美と拳斗。
「あの・・・本当にありがとうございます!」
「何よ急に改まっちゃって」
「いえ、私、ってゆうか私達・・・本当に眞由美さんと拳斗さんにはお世話になりっぱなしで・・・」
「いいじゃないか。仲間同士なんだから」
「はい!それが本当に嬉しくて・・・でも・・・」
言葉に詰まる里香。
「私は全然お二人の役に立ててないんじゃないかと思うと・・・」
「そんな事無いわよ。ここに来てくれたじゃない」
「若い仲間も連れてきてくれた」
「そうよ」
「でもそれだって元々は眞由美さんがあの日、私達を助けてくれたからで・・・その・・・何て言えばいいのか・・・」
里香は自分の気持ちを上手く伝える事が出来ない事にもどかしさを感じていた。
それと同時に頼りっぱなしとゆう事実に自分自身の情けなさ、頼りなさを痛感してしまい昔の様に自信を無くしていたのだ。
「もしあの日あの時・・・眞由美さんが私達と出会えるキッカケを作ってくれなかったらと思うと・・・未だに私、独りぼっちだったんじゃないかと・・・そう思うと何だか凄く怖くなっちゃって・・・」
「それは違うわ」
「えっ?」
「私達が出会うキッカケを作ったのは私じゃなくて里香ちゃん、貴女よ」
「私が!?」
困惑する里香。
「永ちゃんが貴方達を見たら何て思うかしら。名言だったな」
「えっ!?」驚く里香。
「あの日この人もあの場所に居たのよ」
「洋助に美味しい所を持っていかれたけどな」
あの時、洋助の登場で出るタイミングを逃した拳斗は、とりあえずその場で静観していた。
後に駆けつけたスタッフやガードマン達に事情説明をしたのが拳斗であった。
「貴女が勇気を持ってあの連中に挑んだから。それが私達の始まりだった。そうでしょ?」
「私が・・・」
「君は自分が思っている程、弱い人間じゃ無い」
「だから永悟君も貴女に付いて来たんじゃない?もっと自分に自信を持ちなさい」
「眞由美さん、拳斗さん・・・」
誠実な者ほど傷つき傷付けられる。
だから多くの者は不誠実に振舞うのだ。
自分が傷付きたくない為に。
だがそれでも誠実であろうとする者に幸運は訪れるのだ。
富や名声では無い、仲間とゆう幸運が。
OYHの扉を出ると里香は夜空を見上げると同時に店のネオンに目を移した。
約半年前に、この店に来てから色々な事があった。
そしてまた8年前を思い出す。
当時の旦那に無言の圧力を掛けて連中に注意して貰うも、まるで役に立たず意を決して自ら異議を唱えた。
そして眞由美と出会うキッカケが出来た。
更に里香は高校時代を思い出した。
横浜の高校に通っていた為『ハマのメドゥーサ』の噂は何度か耳にした事があったが、その内容は、どれも昔話に出てくる妖怪の様な惨い物で、それとは違う話をしてくれたのが例の彼であった。
「ハマのメドゥーサってホントは凄い美人で優しい人なんだと。よく聞く噂はそのメドゥーサを怨んでる連中が故意に作り上げた物らしい。それにメドゥーサさんは矢沢ファンだってゆうからな。だったら美人に決まってる!」
思い出し笑いをする里香。
結果、その彼の言う通りであった。
思えばすべては彼が導いてくれたのかもしれない。
「里香よお。良かったな!」
「うん!………ありがとう雄悟」
里香は月明かりに抱かれながら家路に着いた。
<BGMは♪A DAY>
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