文化祭当日。
体育館で8時からの開会式が終わると生徒会と文化祭の実行委員、文科系部員は蜂の巣を突付いた様に忙しなく散らばって行く。
軽音楽部も例外では無く10時から体育館のステージで始まる軽音部主宰のライヴイベントの準備の為に1年生部員が慌しく行ったり来たりしている。
一度、教室に戻って自分達の楽器を持って体育館に来た敏広達は1年前を思い出していた。
軽音部主催のライヴイベントの主役は当然3年部員。
トリは部長のバンドと昔から決まっており前半は2年、後半は3年のバンド出演で1年生は仮にどんなに上手くてもライヴには出させて貰えず文化祭中はずっと裏方で敏広達も前年は例外なく、その役目であった。
戦争の様な忙しさ、また勝手が判らず捗らない段取り。
YASHIMAのメンバー3人は1年生を手伝い始めた。
「す、すみません」
「いいっていいって。気持ちわかる」と敏広。
「ありがとうございます」
昨年の経験があるので手際良く事が運び予定よりも早く準備が進む。
そんな頃に他の2年、3年部員達が体育館に現れる。
「おう、お前等、似合ってるぞ」
「今日も一日そうやってろよ」
3年部員が敏広達に嫌味を言う。
だが当の敏広達は全く聞く耳を持っておらず1年生に的確な指示を出しつつ自分達も雑用をこなしていった。
例年なら10時を押す事が殆どなのだが、この日は敏広達のお陰で開始10分前には総ての準備を整える事が出来た。
これに最も感謝したのは当然ながら1年生達であった。
「あ、ありがとうございました!」
「来年は、お前達が次の1年にやってあげろよ」
「はい!」
「ケッ!いい先輩ぶりやがって」
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言うが3年の部員は敏広達が何をやっても気に入らない様だ。
だがこれも敏広達は、まともに相手にしていなかった。
ある意味これもYAZAWA魂。
無自覚ではあったがYAZAWA魂は敏広達の普段の行動にまで現れる様になっていた。
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