ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆082

間髪入れずに3曲目♪”カサノバ”と囁いて、をスタート。


ここでは賢治がスティーヴ・ルカサーばりのギター・ソロを決めギター小僧の注目を集め、また予定調和では無い、互いが良い意味で競い合ってる3人のパフォーマンスはスリリングでエキサイティングなエナジーを生み出し、その気合を、これでもかとゆう位にオーディエンスに観せ付けていた。


4曲目は雰囲気を変えてTEN YEARS AGOヴァージョンの♪二人だけ。


クリーンサウンドに程好くディレイを掛けたギターと柔らかくトーンを抑えたベースラインが心地良く、また、さっきまでのシャウトと打って変わって甘い歌声で囁く様に歌う裕司。
だが声はよく通りヴィブラートもゆったりと力強い。
これには生徒の保護者と思われる大人の女性達がウットリとしてしまっていた。


そして初陣ラストに持ってきた曲は♪黒く塗りつぶせ。


賢治のワイルドでブルージィなギター、敏広のブンブンと唸るベース、裕司の魂の叫びと思えるシャウトが爆発するとフロアは総立ちとなり7割近くのオーディエンスが乗りに乗って盛り上がりだした。


完璧とも言える5曲の演奏をやり遂げステージ中央に並ぶ3人。
割れんばかりの拍手。そして中からはYASHIMAコールまで聞こえてくる。
正直ここまでウケるとは3人も予想していなかった。
照れ臭いと同時に例え様の無い興奮が湧き上がる。


「皆さん本当にありがとうございます!」


敏広が中央のマイクで叫ぶと更に拍手が大きくなる。
3人は手を繋ぎ両手を高く上げはゆっくりとお辞儀をした。
また更に大きな拍手が贈られる。
「くぅ~っ!快感!!」
敏広が思わず唸る。
客席に手を振りながら上手に捌けてゆく3人。


そこでは裏方の1年生が拍手で出迎える。
「先輩!凄いッスよ!!」
「マジで感動しました!!」
羨望の眼差しの1年生達。
「ありがとう!」
思えば敏広達は普段、学校では全く練習をしないので1年生は勿論、2、3年の部員達もYASHIMAの演奏を耳にしたのは、この時が初めてであった。


「曲も凄くカッコいいし!オリジナルですか!?」
無理も無い。今日この会場に居た中で矢沢永吉の曲を知っている者は皆無であろう。
「違う違う!永ちゃんだよ。矢沢永吉」
「えーっ!矢沢永吉ってあんなカッコいい曲、歌ってるんですか!?」
そんな会話をしながら控え室に戻ると次の出番の3年が居た。
「先輩、お先です!」
「どうやらシラけさせないで済んだ様で助かりました!」
さっきの仕返しとも言う風に嫌味を言う敏広達。
だが3年は無反応。しかしそれは何も言い返す事が出来ない為であった。
「それじゃ頑張って!」
「盛り上げてきてくださいね~!」
更に嫌味を仕返す敏広達の横で表情こそ押し殺していたが1年生は普段、威張ってばかりの3年に対して内心『ざまあみろ』と思っていた。


敏広達がステージサイドの控え室から体育館側面の外側通路に出ると一人の男の教師が駆け寄ってきた。
「お前等、凄いじゃないかよ!!」
興奮しながら3人を絶賛する若い教師。
この先生は今年この学校に赴任してきた1年生担任の社会科の教員で、まともに会話をするのは、これが初めてである。
「あぁ、ありがとうございます!」
「まさか高校の文化祭で永ちゃん聴けるとは思わなかったよぉ~!しかもスゲェ上手いしさぁ~!いやぁ~お前等ホント凄い!!」
「えっ!?先生、永ちゃん聴くんですか?」
「大ファンだよぉ~!!」
「マジっすか!?」
「こっちこそビックリだよ!お前等の世代で矢沢を聴いてる奴が居るなんてさぁ!」
先生の名は加藤豊。この人が敏広達に出来た最初のYAZAWA仲間であった。


つづく

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