ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆080

10時になりイベントが始まる。


オープニングアクトは当時、流行っていたビーイング系のコピーバンド。
流行という事もあり客席には1、2年生の女子を中心に30人位が結構盛り上がっていた。


一バンドの持ち時間は30分で終了後は次のバンドの準備の為に10分間のインターミッションが設けられている。
出演バンドは計8組。
前後半とトリ以外は抽選で決められYASHIMAの出番は4番目の前半最後で開始予定時間は12時丁度。
3人は体育館のフロアの一番後ろで1番手のバンドの不味い演奏を聴いていた。


「一瞬じゃない」


成りあがりにて、矢沢永吉の盟友、木原敏雄の言っていた言葉が3人の頭に浮かんでいた。

勿論それは自惚れでは無く、今迄の練習に裏打ちされた自信である。


下手だが無難に演奏を終えた1バンド目がステージから掃け2バンド目の準備が始まる。


2バンド目はパンクバンド。
これが酷い物であった。
パンク好きでも、こんなのパンクじゃないと言いたくなる様な代物で、ただムチャクチャにギターやベースをかき鳴らしデタラメにドラムを叩いて奇声を上げてるだけなのだが客席前方の一部の集団は盛り上がってるから不思議である。


3バンド目になるとヴォーカルが詩を覚えてないらしく堂々とカンニングペーパー片手に歌っているのを観て、よくそんなんでステージに上がれるなと本気で呆れた。


2曲目の途中で敏広達はステージサイドに移動して自分達の出番の準備に掛かる。
「先輩、頑張ってくださいね!」
「おう!ありがとよ」
殆ど面識が無い間柄なのに開始前の敏広達の行為によって信頼関係が出来上がってしまった1年生とYASHIMA。すると


「いよいよお前等か」


さっきまで客席後方で後輩の演奏など、そっちのけで女の子とイチャイチャしてた部長達が近づいてきた。
「折角盛り上がってる所に水を注すなよな」
「シラけさせたらシメるぞお前等」
「俺達の花道、汚すんじゃねえぞ」
大して盛り上がってる風には思えないのだが、どうしても文句を言わなければ気が済まないらしい。


「まぁまぁお手柔らかにお願いしますよ」と敏広。顔が笑っている。


「………テメエ、ナメてんのかよっ!!」
いきなりキレだして敏広に突っかかろうとする部長。
これには流石に他の3年部員も止めに入る。
これにも平然としている敏広。
部長はどんなに挑発しても無反応な敏広達が逆に自分を馬鹿にしてる様に思えて苛立ちを感じていたのだ。
「おい何やってるんだ!!」
騒ぎに気付いた軽音部の顧問が駆け寄ってくる。
「折角の思い出の日を台無しにする気かお前等!」
クサい台詞だが一応、この場の空気は収めてくれた。
部長は舌打ちをしながらその場から立ち去る。


そして3バンド目の演奏が終わり、いよいよYASHIMAの出番となった。
「いよいよ俺達のデビューの時が来たな」


このメンバーで人前で演奏するのは、実は、この時が初めてであった。
だが気負いは無く不思議な程、平常心の3人。
「それじゃ行くか!」
円陣を組んで右手を前に出しLIVE Anytime Womanのビデオで観たオープニングを真似る。


「カモーン、カモーン!」
「カモーン、カモーン!!」
「Come On!Come On!!」
「Woooooooooo~Oh!!」


いよいよ初陣に向うYASHIMA。
「先輩!いってらっしゃい!!」


ステージ裏に居る1年生が叫ぶ。
3人は親指を立ててステージへと向った。

つづく

コメント

  1. chinatown より:

    あ~!!
    早くYASHIMAの演奏が始まらないかなぁ~(^O^)

  2. AKIRA より:

    chinatownさん♪^^
    次回、間違い無く始まりますんで
    御期待下さいヨロシク

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