ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆214

「乗った!」
「私も!」
「異論無し!」

敏広、加奈子、賢治の3人は麻理子のお願いにあっさり同調した。

「だけど問題は哲也さんだよな」
「あの人なら断りゃしないだろ」

敏広の言う通りYASHIMAの助っ人ドラマー柏田哲也も二つ返事でこの話に乗ってきた。


「澄子さんにライヴを観せてあげたい!

 永ちゃんのライヴは今年ダメになっちゃったけど

 裕クン達ならきっと澄子さんを楽しませてあげる事が出来ると思う!

 上手く言えないけど、あんなに自分を責めて傷付いてしまった澄子さんを元気にしたい!

 でも私にはそんな才能も特技も無いし……

 だから……………

 だからお願い!みんな私に力を貸してっ!

 裕クン達、YASHIMAの最高なパフォーマンスで澄子さんをハッピーにしてあげたいの!!」


麻理子の、この想いが後にまた新たなドラマを創るキッカケとなるのであった。

「で、具体的にどうするよ?」
「何を?」
「何をって日程や会場さ」
「あぁ…」
「それなら困った時の情事さんだろ」


「あたしゃドラえもんかっ!!」

敏広からの電話連絡に最初は憤る真純であったが詳細を聞いてテンションが上がってくる。

「ちょっとチョット!アンタ達、随分と粋な事考えるじゃない!!」
「麻理子ちゃんの発案ですよ」
「流石麻理子ちゃん!優しいのねぇ!私も出来る限り協力するわよ!!」

後日それ等の話を真純の口から直接聞いた澄子は涙を滲ませて喜んだ。

「私の為に………」

<BGMは♪夢の彼方>

そしてまた真純の協力は出来る限り所か本当に強力な物であった。

先ず会場だが最初に候補に上がったのが以前、裕司が麻理子に告白したライヴ・ハウス『リバプール』であったが話を聞いた真純の仲間や眞由美の店の常連客から「俺達もそれ観たい!」と言われ、それがクチコミで広がり、とても『リバプール』では収まり切らないと判断した真純が最終的に川崎市が運営する現在、建設中で8月中旬オープン予定の新劇場を押えてくれた。

「随分、話がデッカくなっちゃってるみたいじゃない?」

川崎OYHにてミーティングの為に集まったYASHIMAの面々を前に笑う眞由美。

「全くの予想外ですよ!」
「光栄な事ではあるけど、まだ気持ちの整理が……」
「慌てる事無いわよ。まだ3ヶ月も先じゃない」
「いや3ヶ月しかですよ!」
「物は考え様よ。どうせなら前向きに考えなさい」
「確かにそうですね。だけどあんな良さ気な会場でライヴ出来るとはなぁ!」

その日の昼間、YASHIMAのメンバーと麻理子は真純の奨めで会場の下見に向かった。

いわゆる箱モノ行政の名残の産物なのだが東京国際フォーラムのホールをこじんまりとさせた様な完成間近の会場に出向くと全て真純が事前に手配してくれていたお陰で市の職員や会場関係者が揃って丁重に案内してくれた。

「だけど情事さんってホント顔が広いですよねぇ!」
「川崎じゃスミの事を知らない奴は居ない位よ」
「旦那さんはお仕事、何されてるんでしたっけ?」
「普通の商社マンよ」
「それじゃ、やっぱ情事さん本人の影響力が凄いって事ですか?」
「まぁスミは御両親がある意味ビッグな人だからねぇ」
「えぇ、どなたなんですが?」と麻理子。
「知らなかった?あいつのお父さん村上昌繁よ」
「村上昌繁って……昔の国会議員の!?」と裕司。
「そう」
「そらビッグだわ!!」

敏広達は情事こと真純の家系や周辺に興味が湧いた。

つづく

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