ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆102

麻理子の携帯に遥子からメールが届いた。
4月の最終土曜日に『情事』達いつものメンバーが麻理子の誕生日を祝ってくれるというのだ。
麻理子は素直に嬉しく思ったが同時に自分の誕生日なんかで皆の手を煩わせるのは何だか申し訳ないとも思った。

ふと部屋のフォト・フレームを見る。
子供の頃は叔母の楓が毎年、祝ってくれた。

高校になると1年生の時を除けば遥子と何故か遥子の家族までもが一緒に祝ってくれた。
大学から一昨年までは元カレの小野寺泰昭が。
その元カレ泰昭との写真はフレームからは既に抜かれ、代りにその場所には昨年の眞由美の店での新年会の写真が入れてあった。

遥子と再び繁盛に逢う様になって多くのYAZAWA仲間と知り合い早1年強。
眞由美のバースデー・パーティーやオデッセイ、クラⅡ等、多くのイベントに参加する機会が増えデジカメが主流となった今の時代でも思い出の数だけ写真が増えていった。

麻理子は先程、買って来た新しいフレームの中にセレクトした最近の思い出を入れて古いフレームの右隣に掛けた。
新しい方の写真は全てYAZAWA絡みの物ばかり。
だが真ん中だけは敢えて今は空けておいた。
「いつになったら埋められるかな?」
麻理子は期待と寂しさの入り混じった表情で暫くフレームを見詰めた。

4月の半ば。

遥子から誕生会の詳細メールが送られてきた。
会場は京王線府中駅近くにあるライヴ・ハウス『リバプール』
眞由美の店だと予想してた麻理子は、ちょっと驚いた。
集合時間は府中駅南口に19時。
会場まで送迎して貰えるとの事なので地図や住所等の詳細は添付されていなかった。
メールを読み終えた頃に今度は遥子から電話が掛かってきた。
「一応、確認なんだけど、そのプランで大丈夫?」
「うん。私は平気」
「よかった。それじゃヨロシクね」
「うん。ありがとう」
「あぁ、それから当日は勝負下着、着けて来なさいよ」
「えぇっ!?」
思い掛けない一言に声が裏返る麻理子。
「ちょ、ちょっと何、言い出すのよっ!」
だが電話は既に切れていた。
「………もうっ!」
何で自分の誕生祝いで勝負下着を?
そう思いつつも麻理子の体は自然とチェストに向かい中身の確認をし始めていた。
「アレ何処に仕舞ったかな?」

つづく

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