ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆083

それから加藤先生と敏広達は学食で遅い昼食を食べながら矢沢談義に盛り上がった。


「でも何だってお前達、永ちゃん聴く様になったんだ?」
「去年のWOWOWです」
「おぉ~!行きたかったんだけどなぁ~武道館!!」
「行けなかったンスか?」
「あぁ。初日のチケット取ったんだけどさぁ。色々と忙しくてなぁ」
「大変っすねぇ」
「そうだよ!ホント教師は大変なんだ!この前の浜スタも結局行けなかったからなぁ~」
「あぁ、浜スタなら俺達、行ってきましたよ!」
「何だとぉ!?畜生~お前等、羨ましいぞ!!」
と言いながら敏広の首を絞める加藤先生。
「せ、センセイ…マジで苦しい……」
敏広の苦悶の表情に笑う賢治と裕司。
その後もこの日が初対面とは思えない程に盛り上がる4人。
気が付けば2時間以上その場で話し込んでいた。


するとそこに
「おぉ!居た居た!探したぞ!!」
軽音部の顧問が慌てて駆け寄って来た。
「どうしたんです?」と賢治。
「お前等ちょっと来てくれ!」
賢治の腕を掴み強引に引っ張る顧問。
訳も判らず、とりあえず3人は従い加藤先生も付いてくる。


連れて来られたのは先程ライヴをやった体育館。
何やら中が騒がしい。
顧問がドアを開け中に入る。
すると会場内はYASHIMAコールをする観衆で埋め尽くされていた。



「その話、本当~?」


遥子が疑いの眼差しで敏広を見る。


「いやいや本当だって!」
「いやこれはマジなんだ」
「賢治君が言うなら本当ね」
「何でそうなるんだよ!」
敏広の絶叫に麻理子がクスクス笑う。



その時の顧問と裏方の1年生によれば5番手のバンド演奏が始まると途端に半分以上の客が退場してゆき残った客も、まともにステージを観ている者は殆ど居なくなり仕舞には容赦無くブーイングを浴びせる客まで現れ始め、それはもう痛々しい程に悲惨な光景であったらしい。


以降のバンドが出てもそれは変わらずトリの部長のバンドが出てくると始めはフォロワーが拍手や歓声を送っていたがその後、会場に舞い戻ってきた客がそれ以上の罵声やブーイングを叫び出し遂には演奏中であるにも関わらず大YASHIMAコールが巻き起こってしまい部長のバンドはライヴを途中で投げ出してしまったのだった。


しかも軽音部のライヴ終了後は女子新体操部の演舞がプログラムされていたのだが客が帰ろうとしないので、その準備が全く出来ないでいたのだ。
その不満や苦情が新体操部や生徒会、実行委員会から顧問に寄せられ「お前達どうにかしてくれ!」と泣き付いてきたのだった。


とりあえず控え室に向う敏広達。
中に入ると3年部員が力無く佇んでいた。椅子や床に座り込んで肩を落とし中には泣いてる者も居る。
これが現実。実力の差と言えばそれまでだが、この時ばかりは敏広達も3年部員に対して、ちょっと気の毒に思った。

すると
「先輩、お帰りなさい!」
「アンコールの準備は出来てます!」
1年生の意外な言葉に驚く敏広達。ステージに目を向けると自分達の機材がセッティングされており楽器を持っていけば直ぐにでも再演奏が可能であった。


敏広達は腹を括った。
「文化祭最高!お前等1年もマジ最高!もう一発行こう!」
「オウ!!」


ステージに飛び出すYASHIMAの3人。
一気に歓声と拍手が巻き起こる。
喋るのが苦手な裕司に代わり敏広が先ず自分達を待っていてくれた事に礼を言う。
そしてこの後のプログラムの説明を話し皆に帰ってくれる様に願い出ると不満の声が上がったが代りに、これから1曲だけ披露すると告げると再び割れんばかりの拍手が起こった。


ただ、ここで3人は何を演ろうか少し迷った。
YAZAWAのレパートリーは今日、本番で演った曲以外では、まだ練習が足りない為に自信が無い。
しかし既に披露した曲を演るのもどうかと思い、結局、過去に散々練習したハンブル・パイのオリジナル曲でMr.BIGもカヴァーした♪30 Days In The Holeをプレイ。


大いに盛り上がるも、またここでアンコールの大合唱が始まってしまい本当にこれが最後という事で誰もが耳にした事のあるディープ・パープルの♪Smoke On The Water(当然、キーボードのパートは抜いたアレンジ)で締め敏広達がステージを降りると、やっと観客も退場していった。


何とかその場を収める事には成功。


しかし押してしまった時間と、その後の女子新体操部の演舞は何故か閑古鳥が鳴いてしまい軽音部、とゆうよりYASHIMAの3人は卒業まで女子新体操部の部員達に顔を合わせる度に怨み節を聞かされる事になってしまったのだった。

つづく

コメント

  1. chinatown より:

    YASHIMA、カッチョイイ~~!!
    ところで、AKIRAさんはバンドやってたんですか?

  2. AKIRA より:

    chinatownさん♪^^毎度です
    YASHIMAの3人に代わって厚く御礼申し上げます
    御質問の答えですがYESで今でも一応ギターは弾いております

  3. chinatown より:

    やっぱりバンドやってたんですね~(^.^)b
    YASHIMAのバンドのシーンがリアルだなぁと思って☆音楽っていいですよね♪

  4. AKIRA より:

    chinatownさん♪^^
    リアルに感じて頂けると物書き冥利に尽きます
    音楽は聴くも演るも楽しいですよね

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