破瓜の血に染まったシーツを布団から剥がして暫らくポーッと眺めるバスタオル姿の眞由美。
「丸で日章旗だな」
「馬鹿っ!」
デリカシーの欠片も無い、風呂上りの拳斗の一言に対して叫んでは再びシーツに視線を戻す。
「洗濯して落ちるかしら?」
「気にするな。それにしても初めてだったとはな」
「言わないのっ!」
シーツを投げ付ける眞由美。
因みに拳斗は中学卒業の時、親戚の一人に高校の入学祝いという事で川崎のトルコ風呂(現在のソープランド)に連れていかれ筆下ろし済であった。
「言いたくもなるさ。何せお前の方から襲い掛かって~」
「もう!うるさいわねっ!あ、痛たたた……」
蹲る眞由美。
「まだ痛むか?」拳斗も流石に心配になる。
「当たり前よっ!あんな………あんな、おっきなモノ、入れられたんだから…」
幼い頃から父や兄達のを見慣れていたので知ってたつもりでいたが勃起したペニス、しかも拳斗のそれは眞由美の予想を遥かに超えていた。
「同意の上だろ?」
「そりゃそうだけど……あんな激しくされて………すっごく痛かったんだからねっ!」
「悪いが男にゃ、その気持ちは判らん」
「ホント不公平だわっ!そりゃ貴方はあんなにいっぱい出して、さぞスッキリした事でしょうけどっ!!」
大量の屑ティッシュが入ったゴミ箱を指差す眞由美。
「ま、まぁな…………良かったぞ」
「馬鹿……」
無言で寄り添う二人。そのまま夜明けまで眠りに付く。
その日以来、眞由美はバイトを口実に拳斗の部屋に通い同棲を始め長期の休みに入ると毎日の様に一緒に過ごした。
時に海や山へツーリング。時に部屋で昼夜問わず交わり、時に横浜や川崎の繁華街で夜通し遊び、そこで出くわした不良相手に喧嘩で大暴れ等々。
そして翌年の春休みのある夜。
東京方面からZ2で国道15号を走っていると子安辺りで渋滞に巻き込まれた。
始めは事故渋滞か?と思った拳斗。だがそれにしてはゆっくりではあるが進んでいる。
ピンと来た拳斗は車をすり抜け渋滞の先頭まで進んだ。
案の定、その先は10数台のバイクがノロノロと蛇行運転をしながら鉄パイプ等を振り回し背後の車を威嚇していた。
拳斗はスピードを上げ最後尾のいわゆるケツ持ちのバイクの右側に並んだ。
「おりゃぁ!!何じゃおま…!」
バイクに乗った2人組が大声で威嚇するのを待たずに拳斗はサイドから蹴りをブッ込んだ。
簡単に倒れるバイク。ノロノロ運転だったお陰でそれ程大きな事故にはならない。
拳斗は更にスピードを上げる。
今度はリア・シートの眞由美が中間辺りに居たバイクに追い抜き様にラリアートを喰らわす。
そしてアクセルを廻しまた更にZ2を加速させる拳斗。一気にバイクの集団をブッちぎる。
当然、追いかけて来る集団。
拳斗は集団が追い掛けて来られる速度を保ちながら本牧ふ頭まで向った。
人気が無く薄暗い、ただ波の音が微かに聞こえる堤防でエンジンを切りバイクから降りる拳斗と眞由美。
「随分と嬉しそうだな」
「貴方こそ顔がニヤけてるわよ」
次々に追いついて来るバイク。
「さて、今夜のパーティーの始まりだ」
「楽しめるといいわね」
「おりゃあ!ナメとんのかぁお前等!!」
先頭で来たバイクを運転していた黒特攻服の男が凄む。
「誰が舐めるか。そんな汚い面」
「何ィイッ!!」
「女の前だからっていいカッコしてんじゃねぇぞコラァッ!!」
そのケツに乗ってた白特攻服の男が叫びながら金属バットを持って早歩きで掛かって来る。だがバットを大きく振りかぶった瞬間
ボッ!!
拳斗の鋭い前蹴りが白特攻服の鳩尾に炸裂。この一発で終わりであった。
「て、てめぇっ!!」
殺気立つ集団。だが誰も次に掛かっていこうとはしない。
「おいお前等!殺っちまえ!!」
黒特攻服が右隣に居た双子に指令する。
「へ、へいっ!!」
武器を持って前へとゆっくり進む双子。だがその時。
「あら、久し振りね!」
意外な言葉を発する眞由美。双子が顔を向ける。
すると双子は眞由美の顔を見た途端、顔面蒼白になり持っていた武器を放り投げて自分達が乗っていたモンキーへと走り出した。
「な、てめぇ何、逃げてんだっ!!」
「あ、あれはハマのメドゥーサです!!」
ブチブチッ!!
「えぇっ!!?」
その名を聞いて族達も思わず声が裏返る。
「ひぃーーーーーっ!!」
我先にと逃げ出す鴨川ブラザース。
残りの集団も眞由美の形相を見て後を追う様に、その場から逃げ出した。
そんな中
「あの糞ガキィ!!」と地団駄を踏む眞由美。
その傍らで困惑の表情を浮べる拳斗。
実は学校の生活指導の教員(ジャージ)から眞由美の事は聞いていたが本気にしていなかった。
「………お前があのハマの何某だったとはな」
「何よ?」
「……何でもないさ」
流石の拳斗も眞由美の、その視線には少なからず恐怖心を感じてしまった。
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