麻理子と裕司がくっついてから2週間後、遥子は京王百貨店内のアフタヌーン・ティーで麻理子のお惚気話に延々と付き合わされていた。
次から次へとエンドレスで続く話に、よく話題が尽きない物だと感心しつつ逆上せ上がってまたフラれなきゃいいけどねぇとちょっと心配になりながらも笑顔で聞いてあげている遥子。
「それでね!それで裕クンったら!」
「裕ク~~~~~~~~ン!?」
所変わって、溝の口の居酒屋。
敏広、加奈子、賢治の3人は素っ頓狂な声を上げながら何か珍妙な物でも見る様な目を裕司に向けていた。
「な…俺、何か可笑しな事、言った?」と、その視線に戸惑う裕司。
「それじゃ、お前は、まさか麻理タンとか呼んでるんじゃないだろうな?」
「或いはマリリンとか?」
「まさかのマリアだったりして」
「えっ?いや、麻理ちゃんって呼んでるけど…」
「何だつまんねぇ」
「普通ね」
「もう少し面白い答え用意しとけよ」
「お、面白い答えって……」
「それで?その後はどうなんだよ?」と敏広。
「えっ?あ、いや、お陰様で………」
本気で照れる裕司。
「あ~アホクサッ!」
「聞いてらんないわね」
「勝手にやってろよ」
自分達で聞いておきながら冷たい態度を取る3人。あの日あの時、共に協力してくれた仲間とは思えない。
「参りますよホントに。裕クン裕クンって!」
更に1週間後、川崎OYHのカウンターで遥子は笑顔で眞由美に笑顔で愚痴を漏らしていた。
「でも、その割には何だか楽しそうじゃない?」
「それは、やっぱり麻理子の幸せそうな顔を見るのは嫌じゃありませんから」
「ホント麻理子ちゃん想いなのね」
「親友ですから」と更に表情を綻ばせる遥子。
「こんばんは~」
その親友、麻理子が来店した。この日も麻理子は日中は裕司とデートであった。
「いらっしゃい!」
遥子の隣にちょこんと座る麻理子。
「ねぇねぇ、何、話してたの?」
「麻理子の悪口で盛り上がってた所よ」
「えぇ~っ!?」と本気で膨れる麻理子。
「嘘に決まってるでしょ」と遥子が膨れた麻理子の頬を片手でプシュッと潰す。
「麻理子ちゃんが幸せそうで良かったって二人で言ってたのよ」
「えぇ~っ!?」今度は赤くなってモジモジしてしまう麻理子。
そこに里香が訪れた。
「こんばんは~」
「幸せ者がまた一人」
「えっ?」
「あら?今日は明夫君は一緒じゃないの?」
「あぁ、誘ったんですけど女子だけで楽しんでらっしゃいって」
先日、里香は彼氏の工藤明夫と一緒に来店。その時も遥子と麻理子が店に来ており初お披露目となった。
非常に礼儀正しい好青年であったがその第一印象は3人とも「やっぱりキ○兄に似てるわ」であった。
「こんばんは~」
この日、訪れた4人目の客は愛美であった。
「どうしたのよ?正面から入ってくるなんて?」
愛美は一応スタッフという事もあり、いつもなら裏の非常口から入ってくる。
すると愛美の後からグレーのスーツに身を包んだ屈強な体付きの元関取の荒勢にそっくりな正直見た目からして怖ろしい男が一緒に入ってきた。
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