ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆126

愛美と洋助の結婚式は9月中旬に品川神社にて互いの両親、親類だけで、ささやかに営まれた。

だが同じ日の午後には真純が手配した品川駅前のホテルの大宴会場にて披露宴が行われ、そこでは対照的に多くの参列者が訪れ賑やかな物となった。

麻理子はこの日の為に新調したシャンパン・ゴールドのドレス。遥子は黒のフォーマル・スーツ。

受付にて祝儀を渡し記帳を済ませ既に開場している場内に入る。

「麻理ちゃん!こっちこっち!」

先に会場入りしていた裕司に手招きされYASHIMAの面々と合流する。

「リハーサルは終わったの?」
「うん」

新婦の愛美の要望で披露宴のBGMは全てYASHIMAの生演奏、余興でもライヴ・パフォーマンスを行う予定になっている。

「何だか凄い披露宴になりそうだよな」

白いネクタイを緩めながら辺りを見回すシルバーのスーツを着た敏広。
参列者の多くは眞由美と影虎の親族と双方の会社の従業員という建設業界の者達。
それに新郎新婦のYAZAWA仲間が加わり傍で見たら暴力団関係者の会合の様であった。

当然、洋助の会社の上司、同僚等も訪れているが存在感が殆ど感じられず、また奥の方のテーブルでは洋助の身内と思われる集団が関西弁で賑やかに談笑しており別のテーブルでは愛美の友人達であろう若い女の子のグループが明らかにこの場に馴染めていない様子であった。

やがて雄一郎や真純達も会場入りすると定刻通り披露宴は開始された。

ホテルの若い女性スタッフが司会進行を務め、先ずは新郎新婦の両親が紹介される。

洋助の両親は夫婦漫才の宮川大助・花子に顔も形もそっくりで衣装もコメディアンの様な派手で奇抜な格好をしており、対して愛美の両親である影虎と眞由美は和装で、どう見ても極道とその妻をイメージさせた。

場内の照明が消され淡いピンクのAラインドレスを着た加奈子が♪スタイナーを弾き始める。

ドライアイスが焚かれスポットライトがドアを照らすとBGMは流れる様に♪逃亡者に移行。

ドアが開き大きな拍手が新郎新婦を出迎える。
純白で肩から胸元まで大胆に露出したビスチェタイプのプリンセスライン・ドレスの愛美とモーニングを着た洋助が入場。

「永悟、悔しい?」とニヤケ顔の千晶。
「うるさいなぁ!」
「奪っちゃえば?」
「な、何言ってるんだよ!」
「まるで『卒業』ね」

古い映画を例えにクスクス笑う里香。

「??」

だが若い二人には何の事だか解らなかった。

「でも愛美さん綺麗だよねぇ」

千晶は両手で頬杖を着きながら羨ましそうに愛美に見入る。

そして司会者が開演の辞を告げると新郎の洋助がウェルカム・スピーチを始める。
だが、ここで大助・花子にそっくりな両親が乱入してきた。
厳粛な筈のスピーチが親子3人による漫才と化し会場内はドッカンドッカンと爆笑の渦に巻き込まれる。

思えば、これが今回の『嵐の披露宴』の序章であった。

一応、トリオ漫才は上手く時間内にオチが着き直後の拳斗による祝辞、ケーキ入刀、愛美の祖父(眞由美の父)による乾杯の音頭は恙無く進行し、お食事、歓談の時間となったが参列者の酒が進むにつれ段々と収集が着かなくなっていった。

中盤になると司会の話に耳を傾ける者は殆ど居なくなり突然、酔っ払った眞由美の親族の一組が食事中のYASHIMAに「銀恋を弾いてくれっ!」とカラオケを強要。

だが敏広達はこういう展開になるのを予想済みで見事に演奏をこなすと、その一組は大喜びした。

所がそのせいで次から次へとYASHIMAの生演奏をバックにカラオケを歌いたがる者達が現れ♪銀恋を都合3回。♪男と女のラブゲームが2回。中には結婚披露宴だというのに♪三年目の浮気をリクエストする輩まで居た。

しかしこんなのは序の口。

やがてその嵐は誰も予想してない展開へと向うのであった。

つづく

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました