ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆131

その日以来、遥子の話題は寝ても覚めても天使、麻理子の事ばかりであった。


麻理子の事を嬉しそうに話す遥子を見て家族の皆も穏やかな気持ちになる事が出来、また、あれ程嫌がっていた幼稚園に行く事を拒まなくなった。

ただ、遥子が麻理子と直接、接点を持ったのは最初の一度きりで、それからは全くコミュニケーションを取る事が出来なかった。

互いのクラスが違う事も影響したが何よりこの頃の遥子は人一倍内気で自分の方から麻理子に話し掛ける勇気を持てなかったのだ。

本当なら麻理子とお友達になりたい。でも、もし冷たくされたら。それが一番怖かった。

「なら、お手紙を書いてみれば?」

長姉、麗子のアドバイスを受け遥子は母と二人の姉と一緒に麻理子へのお手紙を書いた。

皆で知恵を集めて書いたそのお手紙を持って翌日、遥子はドキドキしながら幼稚園に行く。

だが、渡せなかった。

内気な性格故に、どうしてもはじめの一歩が踏み出せないのだ。
また折り悪くその日に限って例のいじめっ子達が麻理子の近くに居た。
麻理子に手紙を渡す為にはいじめっ子の前を通らなければならず、その状況でもし邪魔をされたら。
そう思った途端不安になり結局この日は諦めて手紙を持ち帰ってしまう。

「いじめっ子なんて股間蹴り上げちゃえばいいのよ!」
「コカンって?」
「お股よ。お股。男はキンタマ蹴られたら弱いんだから!」
「これ涼子!」

翌日、またお手紙を持って幼稚園に行き今日こそはと意を決してお庭に出ようとしたそんな時

「何やってだよチビクロ」
「!」

いつもの意地悪な男子二人が教室に入ってきた。

「何だよそれ?」
「あっ!」

遥子の持っていたお手紙に目敏く気付くと、いじめっ子の一人が奪う様に取り上げた。

「ちょ、返してよ!」
「やだね!」

手を高く上げる男子。背の低い遥子は全く届かない。

「お願いだから返して!」

哀願する遥子。だが聞き入れてくれる筈もない。
すると別の男子が手紙を受け取って走り出した。

追いかける遥子。

「どうしてそんな意地悪するの!?」
「お前をからかうと、おもしれぇんだよ!」

そう言うと手紙を持った男子は信じられない行動に出た。

「あぁっ!」

何と、いじめっ子は手紙をボールの様にクシャクシャに丸めてしまったのだ。

そしてもう一人とキャッチボールを始める。

ショックのあまり呆然とする遥子。

「ほら、返して欲しけりゃ取りに来いよ!」

丸めた手紙を床に落とし踏み潰すいじめっ子。

「……………何するのよ」
「あぁっ?」
「何だよチビクロ」

近づいてくる二人。

「何するのよっ!」

遥子はキレた。

一人を思い切り突き飛ばし、もう一人の股間を蹴り上げる。
突き飛ばされた男子は壁に激突。そのまま泣き出してしまい遥子は股間を蹴られ蹲る男子に馬乗りになった。
異変に気付いた先生が教室に入ってくる。

「な、何してるの!?」

遥子は制止する先生に抱き抱えられるまで泣き叫びながらその男子の顔を殴り続けた。


つづく

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