ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆144

沖縄への出発当日 羽田空港第二ターミナル

「ごめんね。忙しいのに……」
「逆よ!ありがとう。こうゆう時じゃないともう麻理子と一緒に旅行出来ないもんね」

12月に入ると休日返上で仕事をしていた遥子。その代わりに会社が代休をくれたので遥子はこの2日間に休みを貰った。

「ただ離陸したらちょっと眠らせて」とアクビをする。
「そんなに忙しいんだ……」
「来年、マレーシアで大きなプロジェクトが計画されててねぇ。私の上司が総責任者に任命されてその準備の為にウチの部署、大忙しなのよ」

言葉通り遥子は飛行機が離陸するとスイッチが切れたかの様に眠ってしまった。
隣の席で麻理子も目を閉じる。子供並に寝付きがいいので直ぐに夢の中へ。

その時、麻理子が観た夢は高校の夏休みに遥子と一緒に海へ行った時の記憶。

一年の時は日帰りで鎌倉の由比ヶ浜。二、三年の夏には涼子が同行してくれて二泊三日で伊豆白浜へ。

何処の海岸でも必ずナンパされたが遥子が一緒だった御陰で余計な事に巻き込まれずに済んだ。

また、2年の時の2日目にはしつこく声をかけてくる男を遥子が得意の合気道でブン投げ砂浜に頭から落とし逆様になった男の姿を見た海の家のおじさんが「犬神家の一族だっ!」と叫び海水浴客が爆笑なんて事も有った。



「麻理子、麻理子」

遥子に肩を叩かれ目を覚ます。

「もう那覇に着くわよ」
「んん……」

まだ寝惚け眼の麻理子。対照的に遥子は完全にONモードになってる。

定刻より10分遅れて飛行機は那覇空港に到着。

タクシーで遥子が予約した那覇市内のホテルに向かいチェック・イン。
ツインルームなので二人交互に素早くシャワーを浴び着替えてメイク。

「遂にチャイナデビュー」

バスルームの鏡の前でチークを塗りながら嬉しそうな表情の麻理子。

どうせなら遥子と一緒に着たいと思い、先のライヴでは敢えて着なかった。

この年のツアーで麻理子は横浜BLIZの2日目とZEP東京の最終日に共に裕司と参戦。

東京4日目は遥子と参戦するも、この日、遥子は仕事が長引いて3曲目の途中から会場入リしたので結局、別々で観る羽目になった。

「これで………大丈夫かな?」

胸にパットを詰め込んで部屋の鏡の前で色んな角度からチェックする遥子。

バスルームから麻理子が出てきた。

「わぁっ!遥子カッコいい!!」
「麻理子も素敵よ」

遥子は紫、麻理子はラベンダー地のドレスを着て鏡の前に一緒に立つ。

「ねぇ、写メ撮ってもいい?」と麻理子。
「いいわよ」

鏡に映る自分達を撮影、タクシーで会場まで向かう間に裕司へメールで送る。
因みに麻理子が買ったもう一つの白いドレスは裕司からコスプレ・エッチを熱望され、その際に少し汚してしまった為に現在クリーニング中。

そして二人はダンスクラブ松下へ。

開場30分前だが既に多くのファンが集まっていた。
南国沖縄でもこの時期は肌寒く二人はこの年のツアータオルをショール代わりに羽織って寒さを凌ぐ。

会場前をブラついていると

「あれ?遥子ちゃんに麻理子ちゃんじゃないか!」
「ギブさん!」

声を掛けてきたのはミスター・ギブソン。勿論ハンドル・ネームである。

「やっぱり来てたんですね」と笑う遥子。
「最終日はやっぱり見届けないとね」

最終日に限らず、この男はツアー初日も毎年欠かさず参戦しており全国の会場に出没する為にファンの間ではちょっとした有名人であった。
噂では永ちゃんにも顔を憶えられているという。

「それはそうとチャイナいいねぇ!似合ってるよ!」鼻の下が伸びる。
「ありがとうございます」
「所で眞由美姉さんはその後どうだい?」
「お店は営業再開しましたよ」
「それなら良かった!来年になったらまたお邪魔しに行くからヨロシク伝えてくれ」
「はい」
「あぁ、それからさっき敏広らしき男を見掛けたんだけど」
「えっ?」
「一緒じゃないんだ!?」
「……えぇ」

少なくとも遥子も麻理子も共に敏広が今回の沖縄に参戦するという話は聞いていない。

「そっか。人違いかな?まぁいいや!それじゃ今日も盛り上がろう!」

二人と握手して去ってゆく。

その後もミスター・ギブソンは行く先々で他の来場者と代わる代わる談笑していた。

やがて開場。整理番号順に入場するとステージ前は当然ながら所狭しと多くのファンでごった返していたので、遥子と麻理子の二人は敢えて後ろのスペースへと向かった。

「何か懐かしいなぁ」

会場内を見渡しながらデジャヴを感じている遥子。

「そういえば遥子、昔ライヴハウスでアルバイトしてたんだっけ?」
「うん。大きさも雰囲気もこんな感じだった」

その時、麻理子が

「ねえ!あれ敏広君じゃない?」と右斜め前を指差す。
「あらホント!」

横に居る見知らぬ女の子と親しげに談笑している。ギブの見違いでは無かった様だ。
実は、敏広は毎年最低1回は賢治達も面識の無い女の子とコンサートに参戦するのだが、その際その事を絶対に廻りには知らせない。

ふと敏広と目が合った。
一瞬固まる敏広。だが気付かないふりをしてステージ方面へと顔を向ける。

「見なかった事にしてあげましょ」と笑う遥子。
「そうだね」

麻理子は初めて武道館で敏広達に逢った時に遥子が言ってた事を思い出し、同時に遥子は敏広達と出会った頃を思い出していた。

つづく

コメント

  1. ぺこちゃん より:

    ダンスクラブ松下るんるん
    追加公演るんるんだったんですよねわーい(嬉しい顔)
    あのライブハウスのムンムンとした空間カラオケムードカラオケムード
    最終日独特の熱い雰囲気カラオケムード
    とっても懐かしくて、女トラ読んでると、胸いっぱいになります揺れるハート

  2. AKIRA より:

    ぺこちゃん♪^^毎度です
    その節は全く参考にならなかった沖縄体験話ありがとうございます(笑)
    故に全部想像で書いてますんでヨロシクです

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました