ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆087

「アンタかい?束縛女って」
殆ど赤に近い茶髪のショートヘアの女が麻理子に対し見下す様な視線を向ける。
その女は麻理子の最初の彼氏と腕を組んでいた。
「ふ~ん。見るからに世間知らずのお嬢さんって感じねぇ」
信じられない位に冷たい視線を送ってくる。
「毎日の様に彼の部屋に押し掛けるなんてアンタよっぽど暇なのねぇ。それとも欲求不満?」
女が一方的に喋る中、男は黙ったまま麻理子の方に顔を向けようとすらしなかった。
「処女をあげたからってそれで男が自分の物になるとでも思ってるの?」
「よせよ」
やっと男が口を開いた。
「大体、身体を許しただけで彼女面してる辺りが御笑い種よね。彼はアンタの所有物じゃ無いんだよ。」
「よせよ。もういい」
「いいじゃん。何かこうゆう恋する自分に逆上せて頭の中お花畑の勘違い女、見てるとイライラしてくるのよね」
「もういい。行こう」
女を強引に引っ張り立ち去る元カレ。
去り際にも女は麻理子に辛辣な言葉を浴びせ続けた。


「淋しい位なんだよ。淋しいからって死ぬ訳じゃないだろ?」
今度は昨年、別れた小野寺泰昭が現れる。
「だけど俺は毎日毎日本当に忙しくて、それこそ死にそうな思いしてるんだよ」
窶れた表情で訴える泰昭。
「俺にとって今が正念場だからもう少し待ってくれって何度も頼んでるじゃないか。なのに何でそれが判らないんだよ?」
苛立ちを隠そうとしない。
「悪いがもう御免だ。暇な男でも捜してくれ」
そう言い残し泰昭は闇の中に消えていった。


目を覚まし体を起こす麻理子。
自分が今、何処に居るのか一瞬判らなくなったが遥子のマンションに泊った事を思い出し時計を見る。
真夜中の2時。
「また同じ夢………」
正確には思い出したくも無い過去の切ない記憶。
9月に入ってから何故か毎晩の様に繰り返し観るシチュエーション。
未練は無い。むしろ先月までは忘れていた。だがこれが毎晩続くと何とも言えない虚しさを感じてしまう。


「私、淋しいのかな………」ポツリと呟く。


隣のベッドでは遥子が横になりながらその呟きを聞いていた。

つづく

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