ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆148

翌日の放課後。

「ちょっとアンタ!」

麻理子が職員室から遥子が待ってる教室に戻ろうとした時に一人の1年生が声を掛けてきた。

「えっ?」

全く面識の無い生徒だったので戸惑っていると

「顔、貸して!」

下級生とは思えない横暴な態度。
だが根が素直な麻理子は言われた通りその生徒について行ってしまった。

連れて行かれた場所は人気の無い体育館の裏。
気が付けば十数人の1年生に囲まれていた。

明らかに歓迎されていない雰囲気に困惑していると

「アンタさあ!」と先程、職員室前で声掛けしてきた生徒。

「遥子先輩の何なワケ?」
「何って………親友よ」
「ハアァァァァァアッ!?」
「何でアンタみたいなのが遥子先輩の親友なのよ!?」

急に殺気立つ下級生達。

「何でって………」
「大体あんたムカつくのよねぇ!いっつもお姉様と一緒に居てさぁ!」
「遥子先輩だって迷惑してるわよ!」
「そうよねぇ!こんなトロそうなのに付きまとわれてさぁ!」

下級生に馬鹿にされては流石に麻理子もムッとなる。

「そんなのはアナタ達には関係無いでしょ!」
「何よその態度!」
「生意気ぃ!」
「ねぇ、こいつマジでヤッちゃわない!?」
「そうねぇ。調子コイてるわよねぇ!」

麻理子が通う武蔵丘女子高校は都内でもハイレベルな進学校なのだが、そんな学校にも素行の悪い生徒は少なからず居る。

その代表格がこの遥子の私設親衛隊であった。
勝手に遥子に憧れ勝手にメンバーを集っては時々遥子に付き纏ったりするので遥子本人からしたらそれこそ迷惑な連中だった。

話にならないと判断した麻理子。何も言わずその場から立ち去ろうとする。だが

「何、勝手に帰ろうとしてんのよっ!」
「きゃあっ!」

肩を突き飛ばされ押し戻されてしまう。

「あーっコイツの顔、見てるだけでムカムカしてくるわ!」
「もうボッコボコにしちゃおうよ!」
「何ならアタシの男友達に輪姦してもらっちゃおっか」

その時

「何やってんのよ」
「あぁっ!?」

背後から聞こえてきた声の方に眼を飛ばす下級生。だが声の主が誰なのか知った途端に表情が強ばる。

「何よあんた?何か文句でもあるの?」

その声の主は遥子であった。遥子はその生徒をジロリと睨みつける。

「あっ、い、いえ……」

現れたのが遥子だと知った途端、俗に言う『モーゼの十戒』の如く後退りする下級生達。

遥子は麻理子の横にまで向かうと麻理子の肩を抱いて下級生達を見据えた。

「あんた達、私の親友に何か用?この子に文句が有るなら私が聞くわよ」
「…………」
「聞こえなかったかしら?それとも日本語判らない?」
「……い、いえ」
「もう一度聞くわよ。私の親友に何か文句が有るの?無いの?」
「………有りません」
「じゃあ何でこんな所に連れ込んだのよ?」
「…………」

一様に無言になる下級生達。

「まあいいわ。麻理子はコイツ等に用はある?」

そう問われ首を横に振る麻理子。

「じゃあ、そうゆう事だから」

遥子は麻理子の手を引いて、その場から立ち去ろうとする。だが一度足を止めると

「あ、そうそう」

その場に居た下級生全員に射る様な視線を送ると

「あんた達の顔、全員憶えたから。今度、私の麻理子にちょっかい出してきたら一人残らず折るからね」

遥子が合気道の使い手である事を学校内で知らぬ者は居ない。
この言葉に下級生達は皆、真っ青になり中には泣き顔になってる者も居た。

つづく

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