ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆163

《ねぇ、あの噂やっぱり本当だったんだ》
《確かに宮間課長、素敵だけどねぇ》
《略奪愛なんて若いのにやるわねぇ》
《でも略奪には失敗しちゃったんでしょ?フフッ》
《奥さんに子供が出来ちゃったらねぇ~》
《だけどそれは宮間課長にも責任有るんじゃない?》
《だからって普通、既婚男性からの誘いになんて乗る?》
《私は無理だなぁ》
《でも彼女は誘われてホントに課長の上に乗っちゃったのねぇ》
《いやだぁ!もう~!》

言いたい放題の女子社員達。

喧嘩両成敗と言うがこうゆう男女間の泥沼的結末の場合、多くは女の方がネタにされる。
これ等の噂話で傷付く程、遥子のメンタル面はヤワでは無いが当然、職場の空気は悪くなる。

しかも当の達郎が未だに遥子に未練が有る様なのだ。

あの後、達郎は2度、遥子のマンションに訪れた。当然、居留守を使う遥子。本気で引越しを考える。

そんな中、独身の男性社員が次々と遥子の心の隙間に付け込もうと声をかけてきた。
中には遥子に対して本気の者も居たが、いずれも玉砕。
更に相手にされない事を逆恨みして一部の男が良からぬ噂を故意に広めている事実は流石に鬱陶しかった。

そしてこの年(2001年)の12月14日。金曜日。

遥子は浴びる程、酒を飲みたいと思った。
諦めの悪い男達からの誘いを適当に断りながら一人、日本橋駅へと向かう。

行き先はかつてバイトしていたザナドゥ。ロックを聴きながらそのまま酔潰れたい気分であった。

飯田橋へ向かう為に東西線のホームで電車を待つ。
帰宅ラッシュ時間ではあるが進入してきた電車はいつも以上に混んでいた。
電車に乗ると微かにポマードの匂いが鼻に付く。
また通常のラッシュとは明らかに違う熱気と雰囲気。
その原因は矢沢永吉のファンであった。

《もう、そんな季節なんだ》

スーツや皮ジャン、スカジャンを着たリーゼント姿の集団を見て遥子はザナドゥでのバイト時代を思い出した。
自然と、そこやヘヴンズ・プリズナーで出会った敏広や賢治達の顔が浮かんでくる。

《元気かなぁ?彼等……》

何故だろう?特に親しい間柄でも無いのに例の男達の事を考えてしまう。

そして2年前に偶々テレビで観た矢沢永吉のパフォーマンスが脳裏を過る。

「九段下~九段下~半蔵門線~都営新宿線はお乗り換え~」

電車のアナウンスが遥子を現実へと引き戻した。

ゾロゾロと降りてゆくYAZAWAファン達。
途端にガラガラになる東西線の車内。
ドアが閉まろうとする。
すると遥子は飛び出す様にホームへと降りた。
ザナドゥのある飯田橋はもう一つ先の駅。
だが遥子は、そのYAZAWAファン達を追い掛ける様に武道館方面へと歩き出した。

つづく

コメント

  1. Chinatown より:

    これから揺子の新しいドアが開きそうな予感(^^)
    ワクワクします~♪

  2. AKIRA より:

    Chinatownさん♪^^毎度です
    さて扉の向こう側には何が待っているのか
    こうご期待って事で次回もヨロシクお願いします

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