まさかの「愛の告白」に固まる敏広。
一方、美由紀は恥かしそうに顔を赤らめ再び下を向いてしまう。
「……あの頃…他に…………」
美由紀が続ける
「他に、どんな風にしてアンタに話しかければいいのか…判らなくて………それで……」
気持ちを素直に伝えられない時、想いとは逆の行動を取ってしまうのは男も女もよく有る事。未成熟な十代だったならば尚更。
「……ってゆうか、お前あの頃、彼氏居ただろう?」
当時、美由紀に大学生の彼氏が居た事を知らぬ者は校内に居なかった。
「うん。だけど……アンタが文化祭の時………後輩達を手伝ってるのを見て……」
美由紀は当初、敏広の事を軽い男だと思って嫌っていた。
だが例の文化祭当日、1年の雑務を的確に支持して手伝う敏広を見て「良いトコあるじゃん」と見直したのだ。
そして興味本位で観たYASHIMAのライヴに圧倒されると同時に演奏に没頭し普段とは全く違う真剣な表情の敏広を見て今迄の反動なのか美由紀は胸がキュンッ!となってしまったのだった。
所が、この頃の美由紀は、それを素直に認める事が出来ず、結果、後に敏広に対して嫌味を言い続ける事で自分の気持ちを誤魔化し続けた。
しかし、その後の学校行事で行われるライヴでの勇姿や普段の学校生活での周囲に対する気配り等を見て想いは益々募っていった。
「お前、他に好きな男が居るんだろう!?」
当時の彼氏にそう言われ、フラれたのを機にやっと自分の気持ちに正直になる事が出来るも、その頃に足を故障。瞬く間に卒業を迎え怪我の治療をしながら自宅で来年の大学受験の為に勉強中。意中の敏広は自分の志望校とは違う大学へ。
一度は敏広の通う大学へと志望校を変えようと思ったが両親に反対され千代田区の女子大に進学。その後、就職。
それまでに何人かの男性と交際もしたが現在はフリー。
そして先日、同級生の碧経由で今回のライヴの話を聞いて心に仕舞っていた気持ちがまた甦ってしまったのだった。
「あの頃の私は全然素直になれなくて……幼くて………
でも今なら言える。私………松岡が好きだった………
ううん、今でもやっぱり………私………アンタが好きだ」
無言で聞いてる敏広。
「軽くって………女に手が早くて………その上、鈍感で……
……だけど本当は凄く真面目で……後輩想いで………
……やる時にはやる男なんだって………その………
私が言いたいのは………そ、それだけ………」
敏広は尚も口を開かない。重たい沈黙が流れる。
「あっ、ご、ごめんね!これから大事なライヴ控えてるのに、こんな事で邪魔しちゃって………」
その場を誤魔化す様に笑う美由紀。
「そ、それじゃ行くね!……ライヴ、頑張って!」
逃げる様に立ち去ろうとする美由紀。だがその時、敏広に腕を掴まれた。
「言うだけ言って答えは求めないのかよ?」
「えっ?」
美由紀が狼狽える。すると
「!」
敏広は美由紀の身体を力ずくで抱き寄せ強引に唇を奪った。
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