「麗しき女の友情ですか。いいもんですなぁ~」
他に誰も居ない筈の店内で男の声が聞こえてきたので里香は口から心臓が飛び出しそうになる程にビックリ仰天した。
「どっから入ってきたのよ?」
眞由美は大して驚きもせず平然と声の主に問う。
「非常口からですぅ」
水島洋助はカウンターの一番奥の止まり木に座り左手の親指を立てて店の奥を指差した。
「いつからそこに?」
「それでウチに来たのね。辺りですかねぇ」
洋助は止まり木から降りて里香の方へと近づいてきた。
唖然としたまま固まってる里香に眞由美は改めて洋助を紹介。
「怪しいヤツだけど。悪いヤツじゃないから」
「ワシの何処が怪しいんですの?今日もパリっとスーツでキメて、どう見ても優秀なビジネスマンですやん」
「スーツだろうとストリーキングだろうと音も立てずに非常口から忍び込んでくるヤツは充分怪しいわよ」
「んな事より姐さん。ワシ、喉カラカラなんですけど」
「自分の鼻水でも飲んでなさい」
里香は二人のやり取りにクスッと笑い、やっと落ち着きを取り戻した。
「貸切のはずが思わぬ所で邪魔者が入ってきたわね」
「邪魔者は酷いですやん。スペシャルゲストですがな」
里香の二つ隣に座る洋助。
「でも私は嬉しいです。まさか、こんな形で会えるとは思ってもみませんでしたけど」
「思ったより早く会えたわね」
「最近、こっち方面の出張が増えましてなぁ」
「あの、失礼ですがお仕事は何をされてるんですか?」
「スポーツメーカーの営業部で働いてますぅ」
「結構大きな会社なのよ」
「結構所やおまへん。ミズハラ言うたら1部上場企業ですがな」
会社の名刺を里香に差し出す洋介。
「知ってます!プロ野球選手が使ってる道具を作ってる所ですよね?」
「ようご存知で」
「ミズハラって雇用条件が良いけど採用条件も厳しいって大学の就活の時によく話しを聞いてました」
「確かに今でも狭き門の様ですわ」
「アンタよくそんな所に就職出来たわね!」
「コネですコネ」
「えぇ?ミズハラって規律も凄い厳しくて身内のコネ入社も認めないって聞いてますけど?」
「厳密に言うたらスカウトされましてなぁ」
洋助は甲子園出場経験のある高校球児でエース・ピッチャーであった。
最高で2回戦出場止まりだったが抜群のコントロールの持ち主でその実力はプロのスカウトからも注目されていた。
現にプロチームからの誘いもあったのだが自分の実力に限界を感じていた洋助は野球を職業にはしたくないと断り大学進学と同時に野球から足を洗う。
だが母校の野球部と関わりがあったミズハラの社員が洋助の野球センスを気に入って自社の人事部に掛け合ってくれ
就活が始まる頃にその社員が紹介状を送ってくれ、後はトントン拍子で大阪支社に就職が決まった。
「芸は身を助くねぇ」と眞由美。
「姐さん。そろそろホントに何か飲み物頂けませんか?もう鼻水も枯れてしまいましたわ」
洋助の哀願に二人が笑う。
「よく我慢してたわね。折角だから1杯奢るわ」
「ホンマでっか?流石姐さん!気前がヨロシイ!」
「何が飲みたい?」
「この際、贅沢は言いません。ナポレオンで結構ですわ」
この言葉にプッと噴出す里香。
眞由美は無言でグラスにナポレオンを注ぎ洋助の前に置いた。
だがグラスを見て洋助は目を丸くした。
中身が琥珀色では無く透明なのだ。
「あ、姐さん。何ですのこれ?」
「ナポレオンよ。下町のね」
コメント
質問したいことはたくさんあるんだけど、ひとつ。![うまい!](https://blog.seesaa.jp/images_e/247.gif)
文章の添削って、どなたかに依頼してるの?全く誤字脱字がないから、文才さながら感心してますよ
ホントだ! 誤字脱字ないですね~。
さすがAKIRAさん!!
それより眞由美姐さんカッコよすぎ~!!
洋助はんもキャラ立ってますね~♪
読んでると引き込まれていきます^^
バーテルさん♪^^ありがとうございます
全部、自分でやっております
一応、二重三重でチェックしてから掲載してますが
それでも掲載後に間違いに気付いて慌てて訂正する事もよくあります(苦笑)
chinatownさん♪^^ありがとうございます
今後は誤字脱字も増えるかもしれませんですが
見て見ぬふりヨロシクお願いします
眞由美と洋助は今後、更に見せ場がありますんで
そちらも合わせてヨロシクです