ネット小説 web小説【人権剥奪】011

舌打ちをする【少年A】

「…出ないんですか?」

「あっ、うん…」

何だか躊躇している様子。

また呼び鈴が鳴る。

絵美里が受話器を取る。

「はい?」

「○○警察署です」

「えっ!?」

予想外の訪問者に驚く絵美里。

「…いつも巡回に来てるんだよ。多い時には1日5回は来るなぁ」

【少年A】が野々山に保護されてから野々山宅は地元警察からの巡回パトロールを受けていた。

地域の治安維持、周辺住民への配慮、マスコミ、野次馬対策が主な目的だが同時に【少年A】の監視という目的も実は隠されていた。

絵美里が玄関の扉を開ける。

2人の巡査が、ちょっと驚いた表情を見せる。

「あの、野々山さんのお嬢様で?」

「はい。そうです」

「失礼しました!御自宅には今、いらっしゃらないと聞いてた物で」

「あ、いえ、そんな…」

「あの、それで鈴…【少年A】は御在宅で?」

「あ、はい」

ドアを全開させる絵美里。

エントランスに【少年A】が居るのが判ると巡査達の表情に威圧感が表れる。

「ちょっと来て」

手招きをする警察官。

憮然とした表情でサンダルを履き向かう。

「起床は?」

「…今朝、来た警官にも言いましたよ!」

「いいから!何時に起きた?」

「…6時半」

「朝食は?」

「…食べました」

「野々山さんと二人で?」

「…そうですけど」

丸で尋問である。

「あっ、失礼ですが、お嬢さんは、いつ、こちらへお戻りに?」

「えっと、先程…30分位前かな…」

「ありがとうございます」

「ちょっと出ようか」

この場に絵美里が居る事を気にしたのか巡査の一人が【少年A】の腕を掴んで玄関外へと引っ張ろうとする。

無言で拒否を試みたが、もう一人に肩を捕まれて強引に外へ。

絵美里は、その時、自分の用事を思い出し階段を上がっていった。

つづく

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