舌打ちをする【少年A】
「…出ないんですか?」
「あっ、うん…」
何だか躊躇している様子。
また呼び鈴が鳴る。
絵美里が受話器を取る。
「はい?」
「○○警察署です」
「えっ!?」
予想外の訪問者に驚く絵美里。
「…いつも巡回に来てるんだよ。多い時には1日5回は来るなぁ」
【少年A】が野々山に保護されてから野々山宅は地元警察からの巡回パトロールを受けていた。
地域の治安維持、周辺住民への配慮、マスコミ、野次馬対策が主な目的だが同時に【少年A】の監視という目的も実は隠されていた。
絵美里が玄関の扉を開ける。
2人の巡査が、ちょっと驚いた表情を見せる。
「あの、野々山さんのお嬢様で?」
「はい。そうです」
「失礼しました!御自宅には今、いらっしゃらないと聞いてた物で」
「あ、いえ、そんな…」
「あの、それで鈴…【少年A】は御在宅で?」
「あ、はい」
ドアを全開させる絵美里。
エントランスに【少年A】が居るのが判ると巡査達の表情に威圧感が表れる。
「ちょっと来て」
手招きをする警察官。
憮然とした表情でサンダルを履き向かう。
「起床は?」
「…今朝、来た警官にも言いましたよ!」
「いいから!何時に起きた?」
「…6時半」
「朝食は?」
「…食べました」
「野々山さんと二人で?」
「…そうですけど」
丸で尋問である。
「あっ、失礼ですが、お嬢さんは、いつ、こちらへお戻りに?」
「えっと、先程…30分位前かな…」
「ありがとうございます」
「ちょっと出ようか」
この場に絵美里が居る事を気にしたのか巡査の一人が【少年A】の腕を掴んで玄関外へと引っ張ろうとする。
無言で拒否を試みたが、もう一人に肩を捕まれて強引に外へ。
絵美里は、その時、自分の用事を思い出し階段を上がっていった。
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