ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆011

麗子の運転するマジェスタが麻理子の自宅前に着いた時には既に11時を過ぎていた。


一人では家に戻り難いだろうと麻理子を気遣い麗子と遥子も一緒に付いてきた。


麗子が呼び鈴を押す。
麻理子の母、香澄が応対に出てきた。
麗子がインターホンに話し始めようとした時
「山本麻理子サンをお届けに上がりましたーッ!」
遥子が横から割って入ってきた。


「アンタねぇ…」
宅配便じゃないんだからとでも言いたげに麗子は呆れ顔だが麻理子はクスクスと笑っていた。


勢い良くドアが開く。
父、孝之が飛び出してきた。
一瞬、気不味い雰囲気が漂う。


「お、お父さ・・・」
麻理子が言い掛けたその時、孝之は何も履かずに麻理子に駆け寄り、そして麻理子を抱きしめた。
孝之は泣いていた。そして何やら謝罪めいた事を言ってる様だったが言葉になっていなかった。


その横で遥子は姿勢を楽に崩した。
もし孝之が麻理子を殴ろうとしたら得意の合気道で阻止するつもりであったがその必要は無かった。


「あの~、どなたか存じませんが、麻理子を送って頂いてありがとうございます」
母、香澄が出てきて深々と頭を下げる。


「いえ、こちらこそ夜分遅くに申し訳ありません」と麗子。
「いえいえ、そんなこちらこそ」
香澄は更に深々と頭を下げる。


「初めまして。私、槙村麗子と申します。これは妹の遥子。今年から麻理子さんと同じ武蔵丘女子高校に通うことになりました」
「遥子です。麻理子さんと同じクラスです」
「麻理子の母です」


一通りの挨拶が済んだ後に麗子はここまでに至った事のあらましを掻い摘んで説明した。
余計な心配を掛けたくないと思い不良に絡まれていた事は敢えて話さなかった。


「それでは私共はそろそろ失礼します」
「お茶も出さずに重ね重ね申し訳ございません」
「いえいえ、どうかお構いなく」
「本当に、ご迷惑をおかけしました」と泣き止んだ孝之が鼻を啜りながら頭を垂れる。


麗子は孝之に会釈をし車に乗り込んだ。
「お休み。また明日ね」遥子が麻理子に手を振る。
「うん。お休みなさい。今日はありがとう」
車の姿が見えなくなるまで孝之と香澄は頭を下げ続けた。


つづく

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