ネット小説 web小説【人権剥奪】017

この時点では【A子】は、まだ生きていた。

だが【少年A】が事に及んでいる最中に【A子】の意識が回復しそうになると【少年A】は脱がせた【A子】のパンストを【A子】の首に巻き付けた。

「ん…ぐ…んん…」

締め上げると微かな吐息が【A子】の口から洩れる。

また、それにより【A子】の膣が締まっていくかの様な感触を覚え、何よりも苦悶で歪む【A子】の表情を見る事で【少年A】は只ならぬ興奮を感じていた。

「ハァ、ハァ、ハァ、…ん…アゥ、アァーォッ!!」

ビリッ!

力一杯、握りしめていたパンストに亀裂が入り乾いた音が響くと同時に【少年A】は【A子】の膣内(なか)へと青臭い欲液をブチ撒けた。

「ハーゥ…」

射精の余韻に浸りながら【A子】に覆いかぶさる。

「んんーっ」

胸に顔を埋め乳房の感触を楽しむ【少年A】だが、その時【A子】の心臓が動いていない事に気付いた。

「!!」

慌てて【A子】の頬を何度か叩く。だが何の反応も無い。

「ど、ど、どうしよう…」

この時になって、ようやく【少年A】は自分が仕出かした事の重大さに気が付いた。

「ぼ、僕が悪いんじゃ無い!…全てはコイツがっ!コイツが原因を作ったんだっ!」

一人、自己弁護を宣う【少年A】だが落ち着きを取り戻す所か益々パニックに陥ってゆく。

その後、【少年A】は自分が、どの様な行動を取ったのか全く憶えていなかった。

ただ一つハッキリしているのは携帯電話の通話履歴等による物的証拠で自ら110番通報したという事だけであった。


その様な体験からかアブノーマルな性癖が身に付いてしまった【少年A】

そして、いつもなら忠雄が帰宅するまでに使用した絵美里の私物の洗濯、乾燥を済ませ、部屋に元通りに仕舞えば、それで済む筈であった。

だが、その日に限っては突然の来訪者に驚き自慰行為の処理を後回しにしてしまった。

しかも、それが当の絵美里であった事から【少年A】としては絵美里が自室に入る事を是が非でも阻止したい所であった。

しかし、結果として『証拠物』を絵美里本人に見られ、最早、言い逃れ出来ない状況の中【少年A】は完全なる『証拠隠滅』を図ろうとした。

所が動かなくなった絵美里を見て【少年A】は欲情。

かつて【A子】を犯した時と同じ様に生身の女の身体を自分の意のままに出来ると思うと理性が吹っ飛んでしまったのだった。

心臓が止まったとはいえ、まだ温もりの残る女子高生の身体を存分に楽しみ尽くし、理性を取り戻した所で改めて死体の処理を、どうしようか考えていた所に主である忠雄が帰ってきてしまった。

今度は自首したとしても情状酌量は期待出来ない。そう思うと今更ながら自分の、しでかした行為が恐ろしくなってしまった。

こうなったら忠雄も殺してしまう他ない。二人の死体の処理は後から考えればよいと思う様になっていた。

だが、その後の乱闘の末、救急搬送されるも階段から転落時に負った衝撃による脳挫傷と野々山から受けた無数の殴打が原因で搬送先の病院にて死亡。

この事件は瞬く間に国内のみならず世界に迄、広がり日本のメディアは連日トップ・ニュースで扱い、海外でも国政経験者で人権擁護である立場の弁護士が犯した暴行事件という事で関心を集めた。

ネットでは【少年A】は勿論、野々山の過去の発言やら、あらゆる【記録】が蒸し返され、いわゆる【祭り】状態となる。

ただ世間の関心は【少年A】の犯行には殆ど向けられず、野々山に対する非難ばかりが目立った。

極一部で愛娘を辱められた上に殺された事に同情する意見も上ったが、それも

「自業自得」「人権が聞いて呆れる」「これで野々山も、あの時のお母さんの気持ちが少しは理解出来たのでは」と辛辣な意見が浴びせられた。

しかも、野々山の妻で絵美里の母は事件のショックが原因で数日後、自ら線路内に飛び込み後追い自殺をしてしまうという悲劇まで生んでしまった。

その様な中、被告、野々山忠雄の初公判が開かれ結果としては一審、二審、共に【人権剥奪】の判決が下されるも野々山側は控訴。

それでも最終的には【国民裁判】に寄って野々山の【人権剥奪】が確定。

最後の判決が言い渡され退廷する時、

「PR制度(*04)を利用すれば剥奪される事も無く合法的に報復出来たのに。馬鹿な奴だ」

と、傍聴席から聞こえてきた言葉に野々山は衝撃を受けた。

「馬鹿な奴だ」「馬鹿」

エリート意識が強くプライドの高い野々山が自分には無縁だと思っていた「馬鹿」という言葉。

何処の馬の骨とも判らない者に、その様な言葉を浴びせられ、その無礼な物言いに、昔であれば途端に逆上していたであろう。

例のテレビ討論番組の時もそうであったが、野々山は自分よりも格下だと思う人物から意見される事に我慢ならない性格だった。

だが、この頃の野々山には怒りを露わにする気力すら残っていなかった。

「馬鹿…」

独房内でボソっと呟く。

思えば子供の頃から野々山が周囲の者に対して散々、浴びせていた台詞であった。

それが思わぬ所で、この様な形で自身に跳ね返ってきたという事か。

何故、こんな事になってしまったのか?

何故に今、自分が、この様な現状に置かれているのか?

確実に言える事は、野々山忠雄という男は他人の馬鹿は気付けても自分の馬鹿には全く気が付かなかったという事だ。

そして野々山自身、僅かではあるが、その自覚が芽生えつつあった。

自称エリートの転落人生。

しかし、その現実は野々山には、とても受け入れられない物であった。

そして、その日の未明、野々山忠雄は、かつて【ロス疑惑】で世間を騒がせた容疑者が最期を迎えた手法と同じ方法で自らの生涯を閉じた。

第一章 了

*04、PR(パブリック・リタリエイション)/詳しくは次章で。

つづく

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