ドラマティックなイントロダクションに乗りながら大地を揺さぶる様な永ちゃんコールがリズムを刻む。
クレイジーなギターソロとブルースハープが奏でる旋律がうねりを上げて風を切る。
上手側から沢山の護衛に囲まれステージ前を横切ってゆく幾台ものリムジン。
中央で止まったリムジンの後部座席から黒いスーツを着た男達が足早に出てきては反対側に回り込む。
ドアが開き、その男達に誘導されながらショッキング・ピンクのスーツを着た男がゆっくりと階段を上っていった。
日本のロック界のカリスマ、矢沢永吉の登場である。
火山の噴火の様な、ダイナマイトの爆風の様な歓声が天高くにまで突き抜ける。
「カッコいい!!」
思わず自然に口に出た言葉であった。
敏広達3人は体中の血液が湧き上がる様な感覚に身震いした。
昨年テレビで観た時には失笑したのと同じ様な光景も今は完全に見入ってしまう。
永ちゃんがマイクスタンドを握り♪切り札を探せ、を歌いだした時になってようやく3人はリズムに乗る事が出来た。
それまでは廻りの雰囲気に圧倒されっぱなしで呆然と眺めている他に成す術が無かったのだが、この時やっとこの場、この空間と同化する事が出来た様な気がした。
「I~Get~Ready~!」
サビのコーラスでは一緒に歌い間奏に入ると初めて永ちゃんコールをやる事も出来た。
♪EBB TIDEや♪ゴールド・ラッシュでは着席して静かに聴き入るYAZAWAファンにちょっとしたカルチャーショックを受け♪Rolling Nightではもう完全にブッ飛んでしまい♪ファンキー・モンキー・ベイビーでは周りでツイストを踊るお兄さん方の真似をして一緒に踊り、始めの頃の恐怖感などもう忘れグレイトなYAZAWAのパフォーマンスを思い切り楽しんだ。
♪青空で本編が終わり「どうだ?高校生!」と聞かれる。
「はい!最高です!!」
「だよな!」ニッと笑う。
「まだまだ終わらねぇぞ!」
「はい!!」
一緒になって永ちゃんコールを歌う3人。
アンコールの♪GET UPで再び弾け、いよいよトラバスでは初めてのタオル投げを体験。
だが実際にやってみると見てるのとはえらい違いで上手く投げる事が出来ない。
裕司が投げあぐねていると後ろのお兄さんが
「少し丸めるんだ!いい感じで投げられるぞ!」
言われた通りやってみる。するとタオルは真っ直ぐ上に上がり良い感じで広がって自分の手元に落ちてきた。
「そうだ!上手いぞ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
敏広と賢治も真似して同じ様にタオルを投げる。
ただ単にタオルを投げるとゆう行為がこんなにも楽しい物なのか。
何よりスタジアム全体で華麗に舞う無数のタオル、その一部分を担ってるとゆう事実が何だか誇らしく感じた。
満足度100%。いや、それ以上であった。
初めてYAZAWAのステージを観る者すべてがそうである様に予想外、想定外とでも言おうか、完全に常識の範囲を超えているであろうこの空間に度肝を抜かれる思いで敏広達3人は心地良い疲労感と満足感に浸りつつ、まだまだこの時間が続いて欲しいとも願った。
そして
「今日、横浜、最高だよ。もう一発行こう!」
三度ステージに現れた永ちゃんに、この日3人は完璧にブチ殺されてしまうのだった。
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